とかくマイナーに扱われがちなイギリスの近現代作曲家。その小編成オーケストラのどれもが美しく、イギリスらいしいエスプリとジェントルな節度に満ちている。秋の夜長に静かに聴き入りながら目を閉じると、イギリスの田園風景や自然の営みが目に浮かんでくる。擬古的な響きのなかに王朝の歴史や、豊かな郷士たちのマナーハウスの暮らしに思いを馳せる。
録音は適度な奥行きがあって心地よい立体感を味わえる。オーディオチェックにもよい。派手な音や大音量とは無縁のこのCDなのに意外と思われるかもしれないが、システムの立体空間表現力が試されるからだ。よくチューニングされたセットで聴くと、いわゆる「スピーカーの存在が消える」ことが実感できる。
アナログ時代の音源だが、このジャンルにおいては、いまのところほかに適当なものが見当たらないといってよいほどの決定盤だろう。