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1998年、2003年と短期間の間に2 回もリマスターされ、2003 年のリマスターはかなり丁寧なリマスタリングがなされていたが、それでも米ユニバーサル盤特有のザラついた音は、レコードでの音を知るものにとってはもうひとつ満足の行くものではなかった。
レコードとは風合いが異なるものの、それを逆手に取って大胆なリマスタリングを施したモービル・フィデリテイ盤は、一体、ここの米国人エンジニアやスタッフ達はどれだけレベルの高い人達なんだと思わせるような素晴らしいリマスタリングが施されており、本盤リマスター盤ダントツNo.1の出来栄えのものだった。
このブラチナshm盤は、大胆に上下、奥行き感にまで手を加えた厚みのある独特な音が特徴的なモービル盤とは、印象を全く異にするが、甲乙付けがたい。
敢えてひとつに選択するならば、なめらかで、どれだけヴォリュームを上げてもうるさく感じることなく、いつまでもCD特有の疲労感を感じずに聴き続けられるという点では、プラチナshm の方が僅かに上回っている。
対訳がついていたので、英文と一緒に、初めてじっくり読んでみたが、かなり、今でいうところの左寄りの内容で、モータウン社長のベリー・ゴーディが激怒して、発売を認めたがらなかったというのも十分に納得がいく。
71年にレッド・ツェッペリンが来日中に移動の際は常にこのアルバムを聴いており、メンバー達も常にこのアルバムの話をしていて、また自分達の音楽と比較してその落差に落胆する様子が見られたという。
70年代に最も成功した彼等でさえ落胆させる程の音楽性の高さと素晴らしい演奏は、皮肉にも最もそれまでのモータウンらしくないサウンドでもあった。
このアルバムで、長く不遇を囲っていたマーヴィンは、作曲面などあらゆる面で彼を遙かに上回る真の天才とも言うべき存在だったスモーキー・ロビンソンやマーヴィン自身がシンガーとしての魅力や力量の敗北を認めていたモータウンの男性シンガーのトップに君臨していたデヴィッド・ラフィン(元テンプテーションズ)に代わるモータウンの新しい顔として一躍最前線に躍り出た。
次作Let‘s Get It Onと対をなすマーヴィンのキャリアの頂点を極めたのが一世一代の名盤という称号に相応しい本作。
出来ればモービル盤と、このブラチナshm盤の両方を揃えるのが理想。
同じ作品を2枚所有していても絶対に損はない。
どちらもが、それぐらい素晴らしい。
また、タイトルトラックのベースラインに耳を傾ければ、それがどれだけ尋常ならざるプレイであるかお分かり頂けるかと思う。
ポール・マッカートニー(The Beatles)
ジョン・エントウイッスル(The Who)
ジャック・ブルース( Cream)
ジョン・ポール・ジョーンズ(Led Zeppelin)
という歴史に名を残す英国の伝説的スーパーグループの名だたる凄腕ベーシスト達から神のように崇められていたジェームス・ジェマーソンのフェンダー・ジャズベースから繰り出される唯一無比のグルーヴ(人差し指のみのワンフィンガーのプレイスタイル)は、マーヴィンの熱唱と寄り添うような神がかり的プレイの連続。
このアルバムの魅力の半分は、このジェマーソンのベースラインによるものだと言い切っても差し支えない。
良い意味で尋常ではない、神技のフレージングに耳も心も奪われる。
一度はデトロイトのモータウンのレコーディングスタジオ、ヒッツヴィルUSAでレコーディングを終えていながら、より良きレコーディング環境を求めてロサンゼルスにまで赴いて、再度すべてのレコーディングをやり直したマーヴィンの音へのこだわりに対して、音質に最大限に配慮したこのディスクはそれに十分に応えている。
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