小室哲哉と日向大介の共同プロデュースでデビューしたトーコのファーストアルバム。
このトーコという歌手は小室ファミリーの異端児だ。小室哲哉というプロデューサーは95年くらいからプロデュースするアーティストを尖った女性という観点から手がけていた。その顕著な例が安室奈美恵の「Sweet19Blues」「Concentration20」華原朋美の「Love Brace」だ。あくまでも自立した女性、強い女性として歌詞の面からファッションコーディネーションの面から描いてきた。華原朋美の初期のファッションがパンツルックだったのも女性の性の部分を隠したい、つまり女性ファンから見ても嫌悪感を感じないように女性から見てもカッコいい存在として描いた。
しかしこのトーコという歌手はデビューシングルのジャケットから既にそれまでの小室哲哉作品とは全く異なる存在だった。なんとミニスカートだったのである。つまり女性的な部分を前に出した小室哲哉としては初めてのアーティストだったのである。しかし性的に見えるかというと全くいやらしさがないのは、トーコのルックスが清純な感じであるのと歌声が上品だからであろう。つまり小室哲哉はトーコを「コンサバティブなアーティスト」として「あくまで女性らしいアーティスト」として描きたいと思ったのだと思う。セカンドシングル「Loopな気持ち」は小室哲哉作詞、日向大介作曲の名曲だが、歌詞の中を読むと正に「昔ながらの女性らしい女性」を感じ取れる。そして私的トーコのベストソングは「ふわふわふるる」。小室哲哉が手掛けた楽曲だが、それまでの清純な少女の「性への目覚め」を描いた挑戦的な曲。
しかし残念なことに、このトーコに課せられたイメージ戦略はこのアルバムのセールス的失敗から、徐々に曖昧になっていき小室哲哉プロデュースから外れてしまうことになった。
このアルバムは正にハズレ曲がない名盤なのは間違いない。今はApple Musicなどにもあるようなので是非一度聴いてみて欲しい。