押井守のフェバリット女優の1人F・ドルレアック主演ということで興味を持ち鑑賞。酒と紫煙が良く似合う女性で、ブーツや靴下の脱ぎ方も様になっていて、ビジュアル的に押井守が好みそうなのが分かった。押井守のミューズ 兵藤まこ に通じる雰囲気を持った女優で、C・ドヌーブの姉程度の情報しかなかったが、アンニュイで退廃的な女性を演じた今作は、十分彼女の魅力を表現できていた。D・プレザンスの頼りない中年夫の怪演も楽しく、2人の漫才のようなやりとりが生き生きと描写されていた。
ポランスキー監督らしい皮肉とシュールな映像を交え、主人公夫婦の身に起きた1日半の出来事を描き、物事が都合の悪い方向に転がっていく様を楽しむ人間ドラマで、ホラースリラーコメディと謳われるのはどうかと思われる。ポランスキー監督作は10本ほど鑑賞しているが、個人的にテンポが合わず、楽しめた作品が殆ど無かったので、今作も全く期待せず見たのであるが、主役2人の掛け合いに引き込まれ、作品世界を堪能できた。
潮の満ち引きにより閉鎖される古城空間のロケ地も作品のテーマを表しているとのことで、干潟の描写は、人間も自動車も鳥も絵画のような美しい構図で撮影されており、作品の品格を向上させている。
尚、ブルーレイの画質としては、モノクロの暗部が潰れ気味で、あまり、ブルーレイの恩恵を感じることができなかった。最近、2Kレストア版の発売があったので、気になる方は、そちらの円盤の購入をされたほうが良いのかもしれない。