いかれきった『There's a Riot Goin' On』に続き1973年にリリースされた本作は、まさにタイトル通りのフレッシュさで多くのファンを驚かせた。前作にあったけだるく偏執狂的なサウンドは薄れつつあり、それに代わって、のんきなまでの楽観主義が「If You Want Me to Stay」「In Time」といったトラックのすべての音で輝いているように聴こえる。そして、新加入のラスティー・アレンとアンディー・ニューマークのリズムセクションに支えられ、バンドはルーズでファンキーな音を奏でている。また、ドリス・デイの「Que Sera, Sera (Whatever Will Be, Will Be)」のカヴァーにはスライの偏屈なユーモアが再び姿を現している。ただ残念なのは、このあとスライが二度と本作の半分もフレッシュなアルバムを作らなかったことだ。(Dan Epstein, Amazon.com)
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いかれきった『There's a Riot Goin' On』に続き1973年にリリースされた本作は、まさにタイトル通りのフレッシュさで多くのファンを驚かせた。前作にあったけだるく偏執狂的なサウンドは薄れつつあり、それに代わって、のんきなまでの楽観主義が「If You Want Me to Stay」「In Time」といったトラックのすべての音で輝いているように聴こえる。そして、新加入のラスティー・アレンとアンディー・ニューマークのリズムセクションに支えられ、バンドはルーズでファンキーな音を奏でている。また、ドリス・デイの「Que Sera, Sera (Whatever Will Be, Will Be)」のカヴァーにはスライの偏屈なユーモアが再び姿を現している。ただ残念なのは、このあとスライが二度と本作の半分も"フレッシュ"なアルバムを作らなかったことだ。(Dan Epstein, Amazon.com)
シングルで発売された"If You Want Me To Stay"、Doris Dayが歌った名曲のカバー"Que, Sera, Sera (What Will Be, Will Be)"、クールなファンクナンバー"Babies Makin' Babies"等聴き所は沢山あるけれど、やはりこの作品で特筆するべき曲はオープニングの"In Time"であり、2人のメンバーが新加入した真骨頂はここにあると思う。Slyの天才と呼ばれる所以はそのサウンドの革新性にあると思うのだけれど、この曲に関しては今現代に聴いても新鮮でいて、さらに先に進んでいる感じもしてしまう。妙に気だるいギターのフレーズが印象的なイントロから、歌が入った途端に巻き起こるタイトで激しいポリリズムの嵐。ベースとギター、ホーン、そしてドラムのハイハットが空間を埋めるように交差され、とても口に表せないような見事なアンサンブルを組み立てている。そこで生み出されるサウンドはとても鋭く、ピンと張りつめたような緊張感に満ちている。
ただ、僕が思うのはこの作品が制作されている時、既にSlyの麻薬依存はかなりの重症で、一時死亡説も出る程のものであった。そして70年代後半から始まるSly Stoneの度重なるカムバック劇で何度もファン達の期待を裏切ってきたのは、この作品の所為ではないか?と思う。前作"There's Riot Goin' On"で彼は音楽業界における革新的なサウンドは全て出し尽くしたと思われる。だが、このアルバム"Fresh"という作品の残された可能性がSlyという天才を生かし続け、そして彼の転落ぶりを余計に強調してしまったように思う。"If You Want Me To Stay"の過去のライヴ映像を見て悲しくなった。そこには既に生気を失った目をしたSly Stoneが覇気無くぼんやりと歌っていた。Slyの時代は既にこの時終わっていた。だけどこんなに素晴らしいアルバムを創り上げてしまう事が一時代を手にした天才の悲しむべき才能だったのではないかと僕は思う。