日本では、妙に「Love of a Lifetime」の印象が強く、
バラード・バンドのイメージがあるFIREHOUSEだが、
彼ら最大のメガ・ヒットが「Don't Treat Me Bad」で
あった事実を忘れてはならない。
彼らの本質は、アメリカならではのドライで小気味よ
いロック。それはHR/HMでも無く、さりとて産業ロック
でも無く、まさに根元的な意味での「ロック」なのだ。
本作は、そんな彼らならではのピュアなロック、絞り
たての鮮烈で格好いいロックが堪能できる、好盤だ。
聞き所は、まず(1)~(4)の、グルーブ感満点のロック・
チューン4連発で、(5)のバラードが邪魔に思えるほど。
アメリカのバンドらしく、オフ・ビートでのバンドの
一体感が完璧で、「ライブを聴きたい!」と強く思わ
せる。ドライブのお供にも最適だろう。
そして、ラストには名曲(10)が待っている。あっさり
とした衒いの無いメロディだが、この淡泊さが彼らの
持ち味なのだ。
C.J.Snare(vo)は甘いハイトーンの持ち主だが、その
彼が、あくまで熱唱せずに、ぶっきらぼうに淡々と
歌うことにより醸し出される情感、これがFIREHOUSE
のバラードの持つ魅力なのだから。
特筆すべきは、ロン・ネヴィソンの音作りで、90年代
らしいドライなサウンドを基調としつつも、所々に
80年代的なコーラス、70年代的な粘っこいギターソロ、
60年代的なフォーク・トラッドテイストを挿入し、
一見すると地味なんだけど、実に味わい深いサウンド
に仕上げている。
アメリカン・ロックが好きな人は、必聴必携の1枚だ。