大昔、テレビの深夜放送でこの映画を視て以来虜になってしまいました。
当時はこれがポランスキー監督作品だとは露知らず、オドロオドロしい映像の世界に圧倒されて最後まで見終わった時に大いに感動したのは勿論なのですが、同時に物凄く疲れたことが数十年経った今でも思い出されます。
今回、久し振りに観てみるとTVで視た時には気付かなかったポランスキー監督の細かい点に至るまでの拘りを発見することができたので、DVDを買って本当に良かったと実感しております。
一例を挙げますと、映画の最初の方でダンカン国王に反旗を翻したコーダーの領主が絞首刑になるシーンで、コーダー卿の右胸付近の刀傷に蝿が集っているのを初めて知りました。
傷口に蝿や蛆虫が集るのは戦記物等を読んでいて知っておりましたが、映画で本物の蝿を使ってリアリティーを醸し出していたとは気付きませんでした。
蝿の羽音なんかを使って雰囲気を伝えようとした映画はありましたが、本物の蝿を使っているのはなかなか無いのではないでしょうか。
そもそも俳優さんの体に蝿が好みそうな臭いのついた液体なり薬品を塗って、尚かつ蝿が集るまで待たなければならないわけですから、俳優さんも撮影する側も大変ですよね・・・。
特殊メークも手が込んでいますが、傷口からの出血もリアリティーを追求した拘りが見えます。
例えば、映画の冒頭部分の場面で海岸の波打際付近を頭に深手を負って血塗れになっている馬上の騎士が国王に戦況を説明するカットでは、騎士の顔をよく見ると僅かですが血がポタポタと流れ落ちているのが分かります。
普通なら、出血しているメークをして適当に血糊を付けて「ハイおしまい」という場合が多いので、血がポタポタ滴ることはあまり見たことが無いのですが、このシーンをよく見ると顔をはじめとして鎧の胸辺りまで滴り続けています。
また、映画の最後の方でマクベスを見限って城から脱出しようとする兵士達を押し止めようとしたマクベスの召使い(斧を持って裏口の扉を閉めた老人)が弩矢によって頭を撃たれて殺されるシーンがありますが、この召使いが倒れた後に流れ出る血も如何にもそれらしく流れていることにビックリしました。
思えばポランスキー監督の夫人達がマンソン一味に惨殺されてから未だ2年も経っていない頃に制作された作品なので、意識的にせよ無意識にせよ、血なまぐさい場面にリアリティーを求める姿勢になっていたのでしょうか。(あくまでも私個人の勝手な想像なのでご容赦下さい)
書いている内に思い出したのですが、マクベスが3人の魔女と初めて邂逅した場面で、魔女の1人(3人の中で一番若い方)がマクベスに対してスカートを捲るシーンがあるのですが、テレビで視た当時は魔女の腰辺りに大きなボカシが入っていました。
今回のDVD版にはボカシは入っていませんでしたが、ボカシ無しで見たところで肝心の部分は全然見えないので、そもそも映倫は何故あんな画面にわざわざボカシを入れさせたのかその意図が全く理解できませんでした・・・。( '∀` )
ヘアー等に対してバカバカしいまでに異常に過剰になっていた当時の風潮がよく分かる一例といえるのではないでしょうか・・・。(笑)
私は原作を読んだことがないのですが、これを機に本(原書も含めて)を取り寄せて読んでみようかと考えております。
既に原作を読まれた方でもこの映画は一見の価値はありますのでお勧めします。