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ロマン派交響曲の先駆として有名なこの作品が、実はベートーヴェンの死後わずか3年後に生まれたと聞くと驚かれる方も多いであろう。古典的な構成を崩さずに、標題音楽という新しいジャンルに足を踏み入れたベルリオーズは、「ある若い芸術家が陥った悪夢」を登場人物の行動に従って全5楽章で表現し、全曲を「固定楽想」と呼ばれる同一楽想が支配するという、まったく新しいタイプの交響曲を創作したのである。
単にスコアをなぞっただけでは、ともすれば作曲者自身の絶妙なオーケストレーションに飲み込まれがちだし、劇的効果を強調しすぎると今度は素材のグロテスクさばかりが表に出てしまう。このCDでのミュンシュはそのどちらにも片寄ることなく、フランス音楽の巨匠としての手腕をいかんなく発揮し、絶妙のバランスで黄金期のパリ管をドライブする熱演を見せており、永遠に色褪せない名盤として、音楽ファンの人々の心に刻み継がれて行く演奏といえる。(奈良与志雄)
メディア掲載レビューほか
東芝EMIに残された録音から、20Bit,88.2kHzリマスタリングによる新シリーズ、Grandmasterの第2回発売。 (C)RS