いまでこそ、ジュリーニ指揮のブルックナーには確立した評価がありますが、本盤は初期ブルックナーをジュリーニがはじめて取り上げたという意味で貴重な1枚です。全般にかなり個性的な印象ですが、表情がとても豊かでウイーン響からなんとも心地よいサウンドを引きだしています。
ジュリーニは1930年に、ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団でヴィオラを弾いていたときに、ワルター、クレンペラーそしてフルトヴェングラーらブルックナーの泰斗の指揮を一奏者として経験しています。その後、自ら聖チェチーリア国立アカデミーで指揮を専攻します。
1914年生まれのジュリーニがブルックナーをはじめて録音したのは60歳の時で、1974年にウイーン交響楽団とこの2番のシンフォニーを取り上げています。この年、ボストン交響楽団の客演でも同曲を取り上げ、また、ニューヨーク・フィルとでは9番を演奏しています。1976年にはシカゴ交響楽団とこの9番を録音、1982ー83年にはロンドンで7番、8番を演奏しています。ジュリーニが他の番を好まなかったかどうかはわかりませんが、7ー9番は曲の完成度の高さと美しいメロディの聴かせどころでジュリーニ好みだったのかも知れません。その後、ウイーン・フィルと後期交響曲で名演を残したことは記憶に新しいところです。
2番はヨッフム、ヴァント、朝比奈など全曲を取り上げた指揮者でそれぞれ佳演がありますが、そのなかにあってジュリーニの本盤は独特の素晴らしい地位を保っていると思います。