【気品と優雅】
アルゲリッチの演奏には「情熱的」「ダイナミック」という言葉がよく使われます。
私はもう一つ「気品とたぐいまれな優雅さ」を付け加えたいと思います。近年の2台
ピアノの連弾など、最近の活動を聴いて特に強く感じるようになりました。その耳で聞くと
これが彼女の音楽の多面的な魅力の一つの側面だと思うようになりました。
それは、次のようなことです。
曲の、あるいは楽章の鍵となるフレーズに、アルゲリッチならではの弾き方があると感じます。
ときには強調であったり、ときには一音をスッと抜くように弾いてみたり、その繰り返し部分
では、様々なニュアンスのバリエーションを付けたり。何通りにでも弾けるテクニックを駆使
しています。それが実に心地よいのです。
【グルダ?】
モーツアルトピアノ協奏曲25番の1楽章、「これが25番だ」というメロディーがありますね。そこです。最後の一音をスッと抜く、やや弱めに一瞬の「ため」を作って弾く。実に優雅な気品ある舞踏を見るようです。これがアルゲリッチの一つの特質か。この録音は1978年。アルゲリッチ37才の演奏です。
彼女のお師匠様たちの演奏と比べてみました。
まずグルダ
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番&第25番
。驚きました。一緒でした。アルゲリッチが神童だった頃に出会った巨匠グルダ。1年半師事したグルダ。ウイーンの優雅と気品を彼から学んだのでしょうか?そうだとしたら、何と素晴らしい出会いだったのでしょう。(グルダの録音は1974年。グルダ48才)
次にミケランジェリ
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番&第25番
。アルゲリッチとはまったく違いました。彼からは違うものを学んだようです。(1989年録音。ミケランジェリ69才)
【このアルバム】
アルゲリッチの演奏の中では比較的地味?なのかも知れませんが、アルゲリッチを楽しみ、知る上でとても良いアルバムだと思います。ライブ録音のため会場の雑音があり、音質もさほど良くありませんが、返ってそれも魅力かも知れません。