クナッパーツブッシュ&ミュンヘン・フィルのブル8には、ライヴとスタジオの2つのバージョンがあって、これは後者。ライヴより遅いテンポですが、録音はリマスターのため、まずまず悪くないと思います。
ミュンヘンフィルのアンサンブルが悪いという方もおられますが、それより、リハーサルなしで、こんな難曲×大曲を演奏して、何十人もいる楽員に、望んでいるニュアンスで弾かせてしまう人って、指揮芸術史上の奇跡、指揮というものの奥深さを示す大変な例です。
ブルックナーの初心者という言葉を複数のレビューに見受けますが、そういう意識は無用です。聴き手をランクづけするのは、感心しません。今は亡き岩城宏之氏は繰り返し「音楽をわかるとかわからないとか言わないでください。ただ好きは好き、嫌いは嫌いと言ってください」と言っていました。
古いも新しいもありません。敢えて言えば、クラシックのようなジャンルの音楽は古くてこそ良さがあるかもしれません。商業的に昔より盛んになっても、心に響くあるものが希薄になったと思っているのは私だけでしょうか。
いい音楽、心身に深く響いてくるサウンド、虚飾のない内から出て来るニュアンス、地底深くから天高くそびえていく大木の趣のある、スケールの大きさと底力のある響き、それで十分ですね。