バリリ四重奏団の演奏は「古い」とか「流麗」とか評されることが多いが、かちっとして迫力もある演奏だと感じる。13番の弦楽四重奏曲は、作曲当時「演奏不能」とされたため、ベートーヴェンは、軽いフィナーレを新たに作曲して、大フーガに代えた。「あれが重すぎるなら軽いのにしてやるぜ」みたいな居直りの冗談みたいな態度だが、そのあとベートーヴェンは亡くなってしまい。この冗談風な明るい曲が、最後の曲になってしまった。
しかし、なかなかいい曲で、おもしろいと思う。雰囲気は「なくした小銭に対する怒り」みたいで「おれのことを重くて深刻な曲ばかり書いてると思ってるが、軽いのだって書けるんだ!」という、一種の自己批評がように推察する。
このフィナーレで全曲を閉じ、大フーガは別の曲として聴く、というのもありだと思う。その大フーガの演奏はもちろんいい。間の取り方がよく、沈黙がきいている。