アルバム全体的には前作に通じる正統派ブリティッシュHMと言って良いが、このアルバムの特徴なのは何処と無く”影”を感じさせる事だ。それはゾクゾクさせるほどのクールでローテンポな、淡々とした恐怖メタルを聴かせる5曲目、まるで目の前いた味方の屍を乗り越えてもなお行進を続ける、狂った軍隊とも言うべき無慈悲さで打ちのめす6曲目("March!!"というコーラスが抜群のタイミングで入ってきて本当にゾクリとさせる。)に代表されて感じさせる部分だ。これらは前作のラストを飾った不可思議とも言える"Lost Reflection"から引き続いているかのような”恐怖”がテーマとなっている。そう、前半の正統派HMな曲にしても、実は歌詞的には恐怖を題材にしている節がある。前作が神話を題材にしたアルバムであるとしたら、このアルバムは恐怖を題材にしたアルバムと言える。この音楽性は正統派ブリティッシュHMならびにプログレ・ハード畑の人にも十分アピールできるだろう。
だがその後5,6曲目に続く、親しみやすいが滅茶苦茶に切ないメロディで胸を掴む7曲目で救われるというアルバム構成が実に見事。そしてやはりこれらの名曲を支えているのはリズミカルなベースとドラムのリズムワーク。前作以上の完璧な、一つの極まった音楽を提示したアルバムで、メタル好きだが聴いてない人は、真っ先に聴くべき名盤の一つ。