ライナー・ノートによると、ガリフナ族とはポルトガルの奴隷船でアフリカから連れてこられた黒人たちの末裔です。船が難破してカリブの島に流れ着き、そこで彼らは独自の文化を発展させました。そのガリフナの伝統音楽を継承し民族の誇りを取り戻そうと活動を続けているのがこのCDのバンド「リタリラン(鶏の血)」で、89年にホンジュラスのラセイバで結成されました。
収録曲のうちおよそ半分が伝統民謡で、残りの半分がバンドのオリジナル曲です。民族の歴史を背負ったかのようにアフリカの大地の恵みとカリブの抜けるような青空と透き通る海を感じさせる音楽です。打楽器とギターの音色が基調になっていますが、それが時に友情の喜びを歌い、そして時に喪失した故郷への想いを悲しく奏でます。実に!多彩な顔を見せる民族音楽といえます。
私のお気に入りは11曲目の「ミギラバナ(いかないで)」というガリフナ民謡です。村を出ると言う兄と、置いていかないでと引きとめる妹。歌詞を読む限り悲しい曲のはずなのに、旋律はアンバランスなほど底抜けに明るく、人生の悲哀を吹き飛ばすかのような曲です。
こうした知られざる民族伝統の音楽をCDという形で企画することに尽力する日本人がいるということに、驚くと同時に深い敬意の念を抱きます。