フリージャズの嵐にもまれ、不毛だった60年代が過ぎた後、三度目のカムバックを果たしたロリンズ。「あなたにとっての最高傑作は?」と問われ、いつでも「次のアルバムさ」と答えていたことからきたというタイトルが、自信のほどをうかがわせるが、「その次のアルバムこそがこれだ!」とさけびたくなるほどの、快作だ。
まず、エレクトリック・ピアノとエレクトリック・ベースの導入が、サウンドにこれまでにない明るく開放的なニュアンスを与えている。暗くて内向的(?)だった60年代フリージャズの風潮では体現しきれなかった響きだ。
その意味では、70年代クロスオーバー/フージョンの波は、ロリンズにとって完全に吉と出た、といえよう。
電気楽器を使用してファンキーなサウンドを聞かせたからといって、音楽がコマーシャリズムに堕したとかいうのは、ロリンズにとっては見当違いな批判だろう。
ある意味、70年代に入ってからのロリンズこそが、ロリンズの神髄なのかもしれない。
1曲目から、素晴しい演奏が続く。誰がなんと言おうと、素直な耳で聞けば、「サキコロ」と並ぶ傑作であることが体感できるとおもう。
本作に比べれば、62年RCAでのカムバック作「橋」は、いろんな評論家が持ち上げているが、マヤカシだとおもう。
…ただ、本作から吹き始めたソプラノ・サックスに関しては、まだ、余技のレベルを出ず、その点、天才ウエイン・ショーターには及ばない。結局、試行錯誤の末、テナー一本に絞られて行く。
ある意味、ロリンズにとってのソプラノは、キース・ジャレットにとってのエレピのような存在だったのかも…