ファースト、セカンドの発禁騒ぎの後にリリースされたサードアルバム。セカンドが再発になったのは確か1981年の夏だったし、ファーストが普通に流通する様になったのは2000年代になってから。長い間、頭脳警察を聴きたい若者はこのサードアルバムをファースト、セカンドが手に入らない鬱憤を晴らすように愛聴していた。
私がこのアルバムを入手したのは1980年ごろ、パンク、ニューウェイヴの源流の一つとしてヴェルヴェッツ、ドアーズ、ジャックス、村八分などと共に語られていたのがキッカケ。ロックとは何か押し付けの枠にはめられることへの居心地の悪さであり、それをぶち壊す衝動ありきのものであることを教えてくれた。特に「ふざけるんじゃねえよ」は痛快であり、既に他のレビュアーが触れているエピソードと共に聴くと格別なものがある。
ただしこのアルバムを聴き込んでいくと見えてくるのは、むしろ頭脳警察=パンタの世界の多彩さである。自分たちのスタンスを崩さずにロックンロールからバラード、実験曲までが収められており、「嵐が待っている」の激情、「時々吠えることがある」の素直さ、「少年は南へ」や「光輝く少女よ」の叙情、モータープールや殺人許可証といった記号を使ったイマジネーション、繰り返し聴くことでその多面性が刷り込まれていく。
生涯を通じてパンタは戦いの人であったが、同時に溢れる叙情と遊び心を併せ持った人であった。まだ20代前半で荒削りなパンタ、でもその後の作品に繋がる自由な感性こそが、このアルバムの一番の魅力かもしれない。これから頭脳警察、パンタを聴き始めようとする方の最初の一枚としてお勧めしたい。