年代的にラジオドラマ制作が盛んだった時代である。制作サイドは、なにを選ぶかでセンスを問われた。
本作は、人気のホラーシリーズ。第4作をラジオドラマ化している。活字メディアを、ドラマ化するにあたり、一番の障害は、原作ファンの持つイメージ。イメージどおりで無いと総スカンになることもあるのは日本の常でもある。
レビュアーは、どのメディアでも楽しむ主義なので、よほどのことがなければ、受け入れる派。節操が無いという向きもあろうが、機会を増やしてくれるのだから、こんなによいことはない、と開き直らせてもらう。
原作のどの部分を抽出すればよいか、という意味で、バランスのよい脚本であると思う。キャストも演技派ぞろい。現代のアニメ業界を俯瞰すると、キャスト、特に女性役はカワイイアニメ声が氾濫しすぎていると感じてしまうのだが、本作ヒロインは演技力は秀逸だ。それは履歴が物語る。無駄なリスナー受けを狙わない演技がいい。
本作でも、持ち味は存分に発揮されている。ストーリー展開も、時間的制約の中ではよくまとまっている。
どういうシチュエーションで、聴くか、だろう。ベストなのは、深夜、闇の中で、であろう。視覚的情報を絶ったほうが脳内イメージが膨らむから。原作者は、別なホラー作品のCDドラマを再生する際の環境として、闇の中、ひとつだけ照明(小さなスタンドライトのようなほのかな明かり)を点して聴くのがおススメと述べている。照明ひとつの理由は、光がある分だけ闇が深くなるから。闇にうごめくものに敏感になる、目に見えない存在に対して恐怖感が倍増する、から。
オーディオ機器によっては、イルミネーションがとても明るいものがあるので、そうした機器を所有している人は、その照度で十分と思う。
夜を迎えたら、メインの照明は消す。静けさが増すはずだ。後は再生するだけだ。では、どうぞ。