製作側の気合いが伝わってくる力作。曲は基本的にシンプルなポップロックで構成されているが、ストリングスやコーラスの付与、UKレコーディングによる現地ミュージシャンの起用、マスタリング界のトップエンジニアであるテッド・ジェンセンの起用など、声優の二作目としては異例とも言える超豪華な作品に仕上がっている。もちろん徒にムダ金をかけているわけではなく、その効果は抜群で、これらの仕掛けは本作が優秀録音・優秀作品として成立することで見事に結実している。サウンドバランスが絶妙で、生楽器のナチュラルな音と坂本の息づかいまで伝わるリアルな声との相乗効果により、作品の品格を一段上のレベルへ押し上げている。この作品を機に、彼女の歌は右肩上がりで巧くなり、それに比例して音楽活動へ傾倒していくことになる。
本作は声優ファンだけでなく、音楽家として一般的な音楽ファンにも門戸を開放したという意味で、坂本真綾の代表作と言って間違いないだろう。