母親をなくしたフィオナは祖父母の住む小さな島で生活を始める。
フィオナはそこで自分達の一族が昔から海に住むアザラシ、そして妖精とのつながりを密接に持ち続けてきた事、自分達の一族には海の精の血が入っている事を知る。
フィオナの弟は生まれてまもなくカゴメに運ばれて、海に連れ去られ、その後ゆりかご型の船に乗っているのを何度も見かけられていた。
やがて、フィオナはアザラシ達と共生する弟を見つけ、彼を人間の世界に連れ戻そうとするが・・・。
そもそも、アイルランド人のフィオナの祖先がイギリス語や習慣の強制に反発して、あざらしに乗って女ばかりの島にたどり着いたことから一族の歴史は始まる。
そして、その子孫の男はまるで「天女の羽衣」のように、アザラシが皮を脱ぎ捨てた妖精と結婚し、子供を設けた。だから、フィオナの一族と海のアザラシは家族なのである。
弟は海に住む一族の“母”に呼ばれたことになる。不気味でありながら、どこか懐かしい日本の民話にも共通するような話を監督も、悲観的にならずむしろユーモアたっぷりに演出している。
金持ちに借家を取られ、一族の起源の島にフィオナ、フィオナのいとこ、祖父母は家を手作りすることになるのだが、出来上がったその日はひどい嵐になる。そして、その夜、弟は祖父母達の前にも姿を現す。
フィオナの熱意に負けて、アザラシ達は弟を無理やり地上に返し、一家は暖炉に当たりながら再会を喜ぶ。
そこには厳しい環境と歴史にもまれ、“過疎”の典型のような土地に根ざして生きる家族のかけがえのない血筋の伝統、神話、そして確かな希望が感じられる。