ドラマーの交替は珍しくも何ともないが、それがここまで音楽性を大きく変えた例は唯一無二だろう。
第一作「閃光のラッシュ」では際立った個性は感じないが、ドラマーがニール・ピアートに替わった
本作「夜間飛行」でラッシュの音楽性は一挙にシリアスかつ多彩に進化した。
本作の核をなすのは何と言っても一曲目の「心の賛美歌」だ。
一聴するや心を鷲掴みにするサウンドの爆発、
「自分の心に従って、自分の力で生きようじゃないか」というメッセージ。
ラッシュの音楽や歌詞が大きな変化を何度も遂げているのは有名だが、
その中で決して変わらないラッシュ音楽の原点、常にラッシュ音楽の中核にあるものが
この「心の賛美歌」に凝縮されている。
ラッシュ初期の名作としては4作目「西暦2112年」がつとに名高いが、スマートに整理され過ぎていて些か物足りない。
むしろ本作や次作「鋼の抱擁」の方が荒削りだが爆発的なエネルギーに満ちていて個人的には好き。
なのにどうして廃盤なの!?せっかくCDになって日の目を見たのに!?
「西暦2112年」より本作の方が好きというファンが仮に私一人だとしても、
いつの間にかラッシュの旧作は軒並み廃盤になっていたことを知って愕然としたのは私一人ではあるまい。