ベートーヴェンは自分のバイオリン協奏曲の出来栄えに自信を持っていてその他のバイオリン協奏曲は書かなかったし、このバイオリン協奏曲をピアノ協奏曲にも編曲していた。
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今回の演奏者はギドン・クレメール(Vn)ニコラス・アンノンクール指揮のヨーロッパ室内楽団で古楽器による演奏団体だ。(録音1992年)
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アンノールクールの演奏は常に僕の先を行って驚かせてくれる。
彼がまだウィーン交響楽団でチェロを弾いてた時僕は彼らのグランパルティータ(13の管楽器によるセレナーデ)を聴いた。
CDを聴いて「これは違う曲だ」と思った僕はもう一度CDジャケットを見たが間違ってなかった。彼らの演奏に美しさを感じなかった僕だが年が経つと彼らの演奏の方が良いと感じてしまった。
その後アンノンクールは古楽器演奏の分野を開拓し今の古楽器ブームの立役者となった。
彼の音楽はいつも聴衆を裏切るが時間が経てば彼の表現意図が理解される。
20世紀と21世紀の音楽をリードしてきた音楽家とも言える。
彼はオペラも指揮していて「フィガロの結婚」のザルツブルグ盤は賛否両論あったがそれは演出についてであり。アンノンクールの音楽に対してではない。
僕はチューリッヒオペラ劇場での「フィガロの結婚」DVDを持っているがアンノンクールのテンポ設定は見事だ。
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ギドン・クレメールとのコンビで80年代にウィーン・フィルとモーツアルトのバイオリン協奏曲全集を録音したがこれは未だにベスト盤と評価されている。
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本来カデンツァというものは譜面上にはカデンツァとしか表記が無く独奏者のカデンツァの演奏の後でトリルでオーケストラに演奏が渡り譜面通り音楽は進む。
クライスラー以外の昔の巨匠でクライスラーのカデンツァを使ってる演奏家は少ない。
ウォルフガング・シュナイダーハン 自作またはヨアヒム作
エーリッヒ・レーン ヨアヒム作
ヨゼフ・シゲティ ヨアヒム作
ヤシャ・ハイフェッツ 第1楽章は師匠のアウラー作、第3楽章はヨアヒム作をそれぞれ自身で改作
ブロニスラフ・フーベルマン ヨアヒム作
ヨゼフ・スーク プシュホダ作
など。
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ベートーヴェンがモーツアルトのピアノ協奏曲20番のカデンツァを書いたことは有名だ。
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今回彼らがやったのはカデンツァにピアノ協奏曲版のカデンツァを使ったことで最初にピアノのカデンツァとテンパニーが出てきた時には驚いたが面白かった。
別にルール違反ではなく、今後は誰が現れるのだろうかと思ったら、なんと2010年にイザベル・ファウスト(Vn)がクラウディオ・アバドの指揮でカデンツァにベートーヴェンがピアノ協奏曲に編曲したものを使っている。
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またもアンノンクールに先を越されてしまった。
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