96年発表の70年代の楽曲を中心にしたコンピレーション盤。
アルバム名どおりソウル/リズム&ブルースを基調としたコモエスタ八重樫氏の選曲は秀逸で、曲の並びも非常によく1枚の作品としてあっという間に聴き終わる。37分という収録時間の短さもあるが本当に捨て曲1曲もなくこれ程内容の詰まった作品にはそうはお目にかかれない。
小西康陽氏選曲・監修のFREE SOULやリズム&ブルースの女王といった優れたコンピレーション盤により最近のリスナーにもある程度アッコさんの素晴らしさが広がったとは思うが、私はそれらのコンピレーション盤よりも本盤を愛聴している。
というかアッコさんのアルバムで私が最も好きな作品である。コンピレーション盤が一番と言うのも申し訳ないですが(そこまでコアなファンではないので、すみません、世代的にも完全に後追いですし、ハイ)。
ジャケットワークも格好良く、アッコさんのイニシャルAWとアルバム名DYNAMITEを使ったロゴマークもアトランティックレーベルのロゴマークのパロディで、その手の本格的なソウル/リズム&ブルース系のリスナーに向けても洒落を効かせている。
私なんかでもこれからアトランティックソウルを聴くぞという気持ちにさせてもらっている。
1.「ボーイ・アンド・ガール」の黒っぽさは半端ではなく1曲目からボーカルの凄さにノックアウトされ、そのままのテンションで2.「バイ・バイ・アダム」へなだれ込む。
ライブの3、スタジオの14と2曲収録の「どしゃぶりの雨の中」は単なる歌謡曲ではすまされないアッコさんの歌唱力の高さを堪能できる。
代表曲の一つである10.「古い日記」にしても同様であるが、お馴染みの「ハッ」という掛け声一つでもここまで格好いいものかと痺れさせられる。
そしてなんといっても白眉なのが「和田アキ子リサイタル」を中心にコンピレーションされた6.「スピニング・ホイール」~9.「夏の夜のサンバ」へかけてのライブメドレーだ。ブラスを中心としたバックのテンションの高い演奏に負けじと唸る、叫ぶ、吠える。正にJapanese Queen Of Soulの面目躍如だ。若く、溌剌とした歌声はアレサ・フランクリンのフィルモアやエタ・ジェイムスのロックス・ザ・ハウスに匹敵するのではというような内容だ。
ああ、ブッカーT&MG’sやメンフィス・ホーン隊のようなバンドをバックにしたライブを聴きたい、ライブアルバムも出してほしい。近年のお洒落なサウンドのアプローチも悪くは無いけど、そういった方向ならできればパワフルなバンドで!例えば菅野よう子さんのシートベルツをバックにキング・カーチスとアレサ・フランクリンのフィルモアみたいに2部構成でやるとか。
BS&Tの「スピニング・ホイール」はデビット・クレイトン・トーマスにも引けを取らないボーカルパフォーマンス。
7.「黒い炎」は明らかにこのアルバムのハイライト。といかアッコさんのキャリアでも屈指のモノではないかと思う。ブラスロックの雄Chaseのナンバーにパワフルなドス黒いボーカルがこれ以上なくマッチしている。
8.「パパのニュー・バッグ」は本家JB張りにファンキーで、このライブの70年にJBとオリジナルJB’sと共演(できたらアポロで!)してたらどんなに凄いことになっていただろうかと想像してしまう。JB,Bootsy&Akkoみたいな・・・
全ての音楽ファンにおススメ。
よくアッコさんのコンピレーションベスト等のレビューで歌が下手とかいったのを見かけるが、はっきり言って単なるJポップのボーカルとは次元が違いす。美空ひばりさんとかを引き合いに出すならまだしも。単にカラオケが上手いような一般的に売れている歌手とはスケールが全く違うのです。日本人には決して到達できない(白人でもなかなか厳しい)黒人クラスの声です。リズム&ブルースですよ。ソウルですよ!
アレサ・フランクリンやティナ・ターナー、エタ・ジェイムズ等の本格的なR&Bのボーカリストを聴いている方々にも自信を持ってお勧めできます。
リマスター盤で音も悪くなく廃盤なのが非常に惜しいアルバムです。重量盤ビニールの高音質LPなんかで出したらこれ程マッチするアルバムも珍しいのではないかと思います。CD持っていてもLP出たら買ってしまいそうです。
現CDは中古で安く買えるのでお得だと思います。
なお、ベスト盤だとAKIKO WADA 45th ANNIVERSARY ESSENTIAL COLLECTION(ASIN: B00CIQ51GM)の1枚目が本盤と似たような選曲で、本盤を拡張したような内容なので、新品が欲しい方にはそちらもおススメです。