一発屋ではないんだけれど、一発目が一番インパクトがあるバンドは多い。ビークルもそのひとつだと思う。
このアルバムの前にインディーズのMD音源とかも出しているのだが、この「All you can eat」はしっかりとCDの形で流通の波に乗ったし、完成度も高かったので、実質的なバンドの処女作という感がある。
当時彼らが使っていた楽器はギター2本とベースとドラム及びシンセのみ。他の楽器を使おうというより、これらの楽器でどうにか最高のものを作ろうという気概がビークルにはあったようだ。
このアルバム発売当時の雑誌のインタビューで、リーダーのヒダカさんは、自分達の音楽は「パンクである」ということをやたらと言っていた。音を聞いた限りだと「メロコア」とか「ロック」に分類されると思われそうだが、彼らにはそれらの音楽よりもさらにシンプルに、かっこいいことをやろうという自覚があったようである。
で、それは実現した。当時ゴーステやバンプや矢井田瞳などの(数年後にモンスターバンドに変身した)バンドのアルバムがひしめいていたインディーズシーンで、このアルバムは長きにわたってトップの座を占め続けていたのを、おれは当時の深夜の音楽番組で目撃している。
全曲通じて20分もなく、全曲英語歌詞のアルバムだが、最高の出来である。捨て曲もない。中でも特に「GTS」「WINDOM」「FIEESTARTER」がめちゃくちゃかっこいいと思います。
ちなみに、このアルバムで成功を収めて調子に乗ったためか、ビークルは以降のアルバムでメンバーを増やしたり、楽器を増やしたりと、いろいろなことをしようとする。ただ、それが原因か、バンドがもともと持ってた魅力的な「ロックさ」=「ハングリーさ」が半減してしまい、なんだかポップでキャッチ―でアイドリングなバンドに変身してしまった。ふざけたお面もとってしまったし。ハイロウズと同じような凋落の仕方をした気がする。
バンドは解散してしまったが、ヒダカさんにはまたハングリーなバンドを組んで日本のインディーズシーンを厚くしてもらいたいと切に願う。
それにしても中古品で1円て。浜崎あゆみとおんなじ扱いかい。1000円くらいの価値あるぞ。ちくしょう。