R・シュトラウスのヒロインを歌わせたら、リーザ・デラ=カーザは間違いなく20世紀最高の歌手であった。この曲初演のフラグスタート、ライバルのシュワルツコップ、その後のヤノヴィッツ、フレミングと名歌手はこぞってこの曲を録音するが、スタジオ世界初録音のこの名盤の地位はいまだにゆるがない。
比較的早めのテンポでさらりと歌われているが、そんな中でも気品にあふれ、ロマンの香りを失わないデラ・カーザの声、古き良きウィーンの情緒を今に伝えるボスコフスキーのヴァイオリンソロ、甘く流れすぎずにしっかりと音楽を作り上げるベーム指揮のウィーンフィル。R・シュトラウスの遺言であるこの曲を語るにふさわしい録音である。
しかし、知名度が低く、シュワルツコップの決定盤とされるシュワルツコップ/セル盤の陰に隠れてしまっているが、人工的なシュワルツコップより、むしろ自然な流れを崩さず、曲の美しさを引き立てているデラ・カーザのほうが好ましいのでは。
後半のアラベラ、アリアドネ、カプリッチョのマドレーヌ、どこをとっても最高である。特にアラベリッシマと言われた彼女の歌うアラベラは素晴らしいの一言。個人的にはカプリッチョの最終場面も最高に気に入っている。私の中ではどう考えてもデラ・カーザこそ20世紀最高のシュトラウスプリマだ。