日本を代表するジャズフュージョングループ「フラジャイル」の第5作目です。良い意味でも悪い意味でも、いつ、どの作品、どの曲を聴いても「金太郎飴」的な超絶プレイを展開してきたトリオですが、ここで聴かれるサウンドはやや落ち着いた、少し内省的なサウンドが中心です。たとえてみればビル・ブラフォードと渡辺香津美が組んだプロジェクト「スパイス・オブ・ライフ」の感じによく似ています。これはいままでに見られなかっただけに新味といえば新味と言えますが、これが彼らが目指す本当の音楽なのかというと、実際はよく分かりません。
これはこの作品に限ったことではないのですが、どんな曲でも思うがままにプレイしてしまう彼らのの超絶技巧ぶりは、逆に言えば「両刃の剣」的に彼らの個性をそぎ落としてしまっているような気がしてなりません。つまり彼らの作りだす音楽は、大きなボーンヘッドを冒さない代わりに、誰もが感嘆するような一大ホームランもないのです。ひたすらにコツコツとヒットを打ち続けて安定した実力を見せつけるアヴェレージヒッターぶりは、このトリオの最大の特長であり、また最大の欠点だと思います。ここらあたりが、いまひとつ彼らが本当のメジャーな存在になり切れない原因だと思うのですが。「たまには驚かせてくれよ!」と思うのは、聴く者の我がままなのでしょうか。