1 ヴィーン・フィルとの演奏も妙にせかせかしてブラームスの精緻なオーケストレーションの妙味を損なっていたカラヤンですが、このDG盤も同様。できるだけ音響的余白を排除したレガートの美学とかみ合わないのかな?
2 その代わりといっては何ですが、秘蔵っ子アンネ・ゾフィー・ムターをソリストに迎えたブラームスのヴァイオリン協奏曲ニ長調はムターのヴァイオリンにぴったりと寄り添い、しっとりとした情感も豊かで素晴らしいカラヤン。
3 オーケストラ・コンサートのアンコールでよく演奏される「ハンガリー舞曲集」も、さすが「小曲も全く疎かにしないカラヤン」、颯爽としたテンポで見事な演奏を繰り広げます。
4 ピンカス・ズーカーマンと親友ダニエル・バレンボイムによる「ヴァイオリン・ソナタ第1番」はブラームスの寂寞としつつどこか神秘的なものさえ感じさせるブラームスのロマンを実に良く捉えた演奏。
5 ブラームスの孤独な独白とも言うべきピアノ小品集を弾くヴィルヘルム・ケンプはグールドやカッチェンの沈潜的アプローチとは一線を画した古典的格調を重視した演奏。テクニック的に物足りないと思う人もいるかもしれませんが、「第5交響曲」のスケッチから生まれたとも言われる作品118の6など、どれも素晴らしい曲なので是非聞いてもらいたい。
6 最後を飾る「アルト・ラプソディー」を演奏するのは、これを歌わせたら右に出る者がないクリスタ・ルードヴィッヒをソリストに迎えてのカール・ベーム式ヴィーン・フィルというゴールデン・コンビ。精緻な寂寥をたたえたブラームスのオーケストレーションの妙味がたっぷり味わえます。
■結論 カラヤンの第3番を除けばどれも最高級の演奏。録音も非常に優秀。ブラームスの多面性がったぷり楽しめる。これだけの内容でこの価格は絶対「買い」であります。