ーーこれは私の感覚でしかないのだが「クロイツェル ソナタ」はどれを聴いても、その楽曲の凄さ、が伝わって来なかった。誰の演奏で聴いてもだ!……
何かこの曲には、真実楽譜通りなんてものを超えた、自由自在で、闊達な表現で立ち向かわないことにはベートーヴェンの聴かせようとした音楽が現れてこない?ような……?? そんなものを強く感じてきていた。
ギトリスは自分の言葉でもってヴァイオリンで音楽を歌う。この姿勢、この情熱こそが「クロイツェル」に大きく求められるものだ(と感じられて仕方がない。大半の他の演奏は、殊『クロイツェル』においては楽譜をなぞっているだけにしか聴こえて来ないのだ。これは奏者の内面のパッションを酷く試される楽曲に違いないだろう)。
またアルゲリッチがこの人ならではの野生味と自由奔放さで、楽曲を引っ張って行ったり、支えたり、調和したり……ととんでもない展開を聴かせる。
フランクも他では耳にしたことのない音楽を聴かせる。こちらの演奏は好き/嫌いを感じる方もいるかも知れない。(が、私は面白く聴いている。聴けば聴くほどに)
「ブラボー」ジジイの声のうるさいこと……これだけが辟易するディスクではある。