パッサカリアとフーガは本来のオルガン演奏、ヘルムートヴァルヒャの演奏で聴くべきとは思いますが、対位法の演奏なので難しいところがありますから、邪道ではあるけれど、その聴きやすさから、このストコフスキーの管弦楽版を選ぶ手もあるかもしれません。
参考までに、今は亡き音楽評論家吉田秀和のパッサカリアとフーガについての記述を紹介しておきます。
パッサカリアとフーガニ短調は、むかしストコフスキーが管弦曲に編曲して派手な演奏をきかせたものだった。死んだ詩人の中原中也が大好きで、やたらと友人のうちにもちこんで、きかせたことを思いだす。
「バッハが小川でなくて、海である」というベートーヴェンの言葉が、これくらい造形的な実感をもってせまってくる曲は、少ないのではないかしら。中略
まだきいたことのない人があったら、ぜひ一聴をおすすめする。誰かの言葉ではないが「これを知らないとは、人生にまだそんなよろこびのまっている、あなたを羨む」といいたいところである。