1960年8月27日封切りの新東宝大蔵映画。モノクロ。80分。主演は池内淳子。監督は並木鏡太郎。
〇個性的なホラーの上に、池内淳子人気もあって、早くからビデオ化され、DVDも二回発売されている。今回は新東宝キネマノスタルジアとしての発売。
〇並木京太郎の新東宝最後の監督作品。並木は1994年のインタビュー(『新東宝1947-1961』159頁)で、「そんなもの」「これが遺作というのもどうもね(笑)。まあ、池内くんは頑張ってくれましたよ。自分で怪物のメイクもしてくれたしね」と答えている。
一、本DVDについて
〇画質は特に問題ないように思う。
〇付録はオリジナル予告編。
二、本映画について(ネタバレはケースに書かれている内容程度)
〇映画は特に区切りはないが、勝手に三部に分けてしまうと
☆第一部愛憎編約25分
バレー教室→お誕生日ダンスパーティー→映画撮影→池内淳子と寺島達夫のデート→ピクニック→妬まれた池内が女性3人に後ろから押され、崖から突き落とされる。顔面骨折の重傷。
☆第二部死と再生編約35分
病院→脱走→母の自殺を知る→陰陽師の曾祖母の山の屋敷へ行く→吸血魔の入り込んだ美女として再生。
☆第三部復讐編約30分
池内は別名で、ミス太平洋コンテストに応募受賞し、女優、モデル、寺島の婚約者となった三人の女性の前に姿を現し、吸血魔に変身して復讐を遂げていく。以下略。
〇感想としては、第三部の復讐編はたいへんテンポよく、吸血魔への変身と犯行も面白いのだが、ここまでが50分で、ちょっと時間がかかりすぎである。
〇第一部は犯行編であるし、現代風俗として面白いので、これぐらいは仕方ないとしても、第二部の35分は長すぎる。特に山に来てから吸血魔の誕生までは長すぎる感じ。
〇しかし、それはホラーに詳しくない私の感想であって、当時のホラー好きの人から見れば、吸血魔の誕生する第二部こそが最重要であったのかもしれない。
〇全体としては、女優陣の健闘もあって、十分楽しめる新東宝映画になっている。最後に捻りを加えて、多重人格の運命悲劇の方向(ハムレット??)にもっていくのも良い。
三、本映画の女優について
クレジット順に
〇池内淳子・・実年齢26歳。のちの大女優。略。なお、上記の本によると、吸血魔として動いているのは男優であって、池内ではない。
〇三田泰子・・実年齢知らない。新東宝末期の助演女優の中で、比較的上のランクの人。本映画では池内につぐクレジットナンバー2で、池内を突き落とした三人の女性の中で特別の運命を与えられ、好演している。寺島達夫を池内に取られてしまうが、池内の失踪後に奪い返して婚約する。
本映画の次の月に封切られた『蛇精の淫』(去年DVD再発売)でも、女優クレジットはナンバー2で、主人の小畑絹子に尽くす侍女の役で、好感度高かった。本映画の3月前の『肉体の野獣』では、女優クレジットはナンバー1の看護婦役で、三條魔子や三原葉子より高い位置にいた。
〇瀬戸麗子・・実年齢23歳。助演ばかりだが、新東宝末期の比較的著名な各映画にそれらしき役で出ており、比較的目立つ人。『海女の化物屋敷』では女優クレジットナンバー2の善玉で、入浴あり、水着ありの熱演。新東宝解散で引退。
本映画第一部ではポニーテールで登場、池内に勝手に惚れ込んだ高宮敬二に捨てられて池内を逆恨みし、第三部ではちゃっかり人気モデルになり、高宮の妻に納まっている。
〇矢代京子・・実年齢22歳。『九十九本目の生娘』では警察署長の娘で、菅原文太の恋人の処女を演じ、最後に誘拐されて吊されてしまう。本映画では、寺島達夫の妹で、かわいい系。善玉なので、吸血魔の毒牙を免れたが、本映画を最後に引退した。
〇天草博子・・よく知らない。新東宝前衛的ミステリー映画『女の決闘』(1959)で主人公の妹役のダンサーを演じた人。本映画では新人女優内定の座を池内に取られてしまうが、失踪後は人気女優となっている。パーマのロングヘアの硬質の美女。
四、私的結論
〇★★★★★か★★★★かで悩むところだが、歴史的作品であり、十分面白く、女優陣健闘しているので、★★★★★でよいと思う。
〇長文失礼した。