「のっさん」こと小野瀬雅生の初ソロアルバム。 演奏のほとんどを自分でこなした、というのっさん色超濃厚、しかしバラエティーに富んだ曲の数々が収録されている。 私のお気に入りNo.1は1曲目収録の「TURN ME ON」。コンガをひっくり返した中に顔を突っ込んで歌って録音した、というエピソードがある。そういった録音ならではの効果か、小野瀬の息遣いまでもがはっきりときこえていて、それがアコースティック・ギターのサウンドに重なった事により、歌と演奏がものすごく近く感じられ、「生」感の強い音になっている。このレコーディング方法のアイディアを出したエンジニアの発想のすばらしさに拍手を送りたい。いいアーティストといいエンジニアが手を組んだときに傑作がうまれるのだと感動した。 お気に入りNo.2は2曲目に収録されている「MOTTO WASABI」。フィンランドのアキ・カウリスマキ監督がこの曲の命名者。第55回カンヌ国際映画祭においてグランプリを受賞したアキ監督の作品『Mies Vailla Menneisyytta』へ挿入曲としても使用され、話題を呼んだ曲。とってもエレキなベンベンサウンドが懐かしいような新鮮なような。一度聴いたらしばらくは頭の中をぐるぐるまわってしまう、決して派手ではないけれど、印象的な曲。 お気に入りNo.3は6曲目「クレイジー・ピロシキ・No.1」。この曲では、小野瀬のギターテクを存分に味わえる。ライブで彼が髪を振り乱して演奏している様が目に浮かんでくるようだ。 小野瀬は現在大ブレイク中のクレイジーケンバンド(C.K.B.)のギタリストとして活躍中だが、このアルバムへはC.K.B.のヴォーカル横山剣が3曲目「世界の半漁人」で参加、ソウルフル&ファンキーなヴォーカルが曲にベストマッチしている。また12曲目「Destroy All Monsters」ではやはりC.K.B.へ参加中の高橋利光が超絶テクのキーボード・プレイで小野瀬とのセッション・バトルを繰り広げている。 小野瀬はこのアルバム発売後同名のバンド「小野瀬雅生ショウ」を結成、ライブ活動も展開中。このバンドでのレコーディング初作品「新・イカ釣り主義」がC.K.B.のアルバム「グランツーリズモ」へ収録されており、小野瀬ファンならこちらも必聴。今後のレコーディング活動も楽しみである。