1 | お手紙 |
2 | 夕暮れ電車に飛び乗れ |
3 | たまに笑ってみたり |
4 | 動物園のにわか雨 |
5 | 田中さん、日曜日ダンス |
6 | ビニール傘 |
7 | 線の上 |
8 | 遠く遠くトーク |
9 | うしろまえ公園 |
10 | 融 |
トイズ・ファクトリーからのメジャー・デビュー盤でありファースト・フル・アルバム。ミキシングをカーネーションの鳥羽修が担当し、音質が飛躍的に向上しているうえ、楽曲自体も粒ぞろいだ。小気味いいロックの「お手紙」に始まり、郷愁感漂うメロディーが秀逸な「夕暮れ列車に飛び乗れ」、ハミングとハンド・クラッピングがぬくもりを醸し出す「田中さん、日曜日ダンス」、それにラストの幻想的なタイトル曲まで、空気公団らしく穏やかであたたかな佳曲ばかり。それらの曲の間にメンバーの日常会話が収録され、アルバム全体の構成もまとまりがある。ソングライティングから演奏、ミックスに至るまで完成度が高く、やはりこれが最高傑作といえる。(小山 守)
まっすぐなその瞳が好き。深い深いその思いやりが好き。ちっちゃくて、でも意志のこもった、やわらかなその手が好き。さみしくてこらえきれないと呟く、その正直さが好き。空気公団を聴く。今日もまっさら新しい“好き”を見つけさせてくれる、そういうところが一番好き。そんなバンド。
この世界はこんなに素晴らしい。そう誰かが歌うとすれば、それはウソだ。僕らが生きてるってことは、なんて素晴らしい。そう誰かがハミングするとすればそれは幻想だ。ウソも幻想も嫌いじゃないけど、それだけで生きていくことはままならない。「まったく素晴らしくはないけど、楽しい」。そういうごまかしのない、自然体の顔でいつもいたいと願う。
空気公団が歌っているのは、歩を進めていくことの楽しさだ。大貫妙子がその美しい楽曲の中で歌っていたのは、呼吸をすることの美しさではなく喜び。彼女たちもまた、図らずも同種の空気を伝えている。はあ、とため息が出るほどキレイなメロディと歌声と演奏を聴きながら、ほっと一息つけるのは、ごまかしがないから。つくろわず気張らず偽らず。のんきだねって笑われたって、自分をしっかり感じ取れるくらいスロー・ダウンしてみる。そこではじめて見えてくるもの、はじめて聴こえるもの、それが空気公団なのだと思う。メジャー初作品は共同プロデューサーにカーネーションの棚谷祐一を迎えて、一曲一曲ていねいにホームメイド。大学のサークルのような一途な一体感を感じさせる一方、ひたむきでナイーヴなだけじゃない、凛とした横顔も見せてくれる。軽やかなピアノとオルガンが絡み合って、きらきらとギターが彩りを加えるサウンドの、昼食後のうたた寝のような幸福感よ。快晴の空の下でのテクテク歩きとも、雨宿りの最中のぼんやりとしたまどろみとも、春とも夏とも秋とも冬とも取れるイメージ豊かな音像に身をゆだねてみる。自分にとって何が大切か、そっと思い出させてくれる名盤。 (平野敬三) --- 2001年07月号 -- 内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)
高い音楽性と独特の活動でインディーズ・シーンに異彩を放ってきた空気公団が、いよいよメジャー・デビュー。これまでの手作り感や身近さに新たな空気感を加えての絶妙な1枚。
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)