トロマ製作、ボブ・ダーリン監督(兼脚本)による異色モンスター・パニック物コメディ・ホラー快作。
<本作は1983年に撮影が終了したにも拘らず、本国アメリカでは1987年まで公開されていない。>
とある町で3人の人間がクローゼットに消える奇妙な事件が発生。
デイリーグローブ新聞社でお荷物扱いの主人公リチャード・クラーク(ドナルド・グラント)は、
編集長とやり手の同僚に嗾けられ、事件の担当となる。
現地に赴くと、警察は周囲で続々と発生する謎の連続殺人事件に手を焼いていた。
クローゼットから現われる神出鬼没の怪物の珍奇な怪異現象と能天気な登場人物達の追跡劇。
軈て警察や軍隊が総出で出動し、一大決戦の火蓋が切って落とされる。
戦闘活劇にまで発展するという何とも痛快な構成が、大変魅力的な映画である。
随所に数々のモンスター映画のパロディ、オマージュ要素を見せながら、
シリアスな人間ドラマの描写を織り込ませるなど、観る側を飽きさせない。
等身大の着ぐるみを使った怪獣マニアに受ける要素が満載。
但し、かなりのお馬鹿能天気映画なので、好みが分かれる作風である。
<ここから、ネタバレ含み、ご注意下さい。>
現地の警察署でリチャードが出会った、教授と母親から呼ばれる天才少年。
その子役はポール・ウォーカーです。
その母(シングルマザー)である大学教授のダイアン(デニス・デュバリー)は、
眼鏡を外したリチャードを見た時、放心状態になります。
この様子は何度となく展開されます。これは、クライマックスに繋がる見事な伏線です。
ダイアンの師匠ペニーワース博士役はヘンリー・ギブソン。
小柄で独特の雰囲気を持つ個性派俳優(声優も熟す)です。
彼は怪物の発する鳴声と同じメロディを使えば交信可能だと睨みます。
この直感は鋭いですが、どんでん返しもありました。
「未知との遭遇」のパロディと思える着想ながら、怪物を追跡する一行が鉄琴を叩く博士と共に、
町をぞろぞろ歩きまわる光景は、大変奇妙で滑稽な雰囲気で、とても面白可笑しいです。
盲目の老人役(ジョン・キャラダイン)を始め、保安官サム役(クロード・エイキンス)、
ターンブル将軍役(ドナルド・モファット)の珍しい剽軽な変人ぶり、
往年の俳優達もカメオ出演して笑わせて呉れます。
「サイコ」(60)のシャワールーム殺人のパロディ場面が、何度もしつこく繰り返され、
「キンゴ・コング」のパロディやら、怪物の口の構造は「エイリアン」(79)だったり、
主人公は「スーパーマン」的なキャラだし、次々と趣向を凝らした場面の連続に「抱腹絶倒」です。
軍用車両やM4シャーマン戦車、M24チャーフィー戦車等を動員して、
総攻撃を仕掛けるクライマックスは圧巻です。
だが、相当な火薬量を使った重火器類でも怪物には歯が立たないのです。
しかし、無敵で史上最強と思われた怪物にも意外な弱点が...。
見事、伏線を回収した納得の結末でした。