誰からもそっぽを向かれてしまっていたマイルスが、年に1回、ブルーノートの社長兼プロデューサー、
アルフレッド・ライオンと”男の契り”セッション(=レコーディング)を行なっていた記録。
当時マイルスは深い薬物中毒状態だったと言われているが(マイルスのブルーノート・アルバムを
語る時に、必ず対になって出てくる)、マイルスくらいの人がヘロヘロでマイクの前に立つわけがない。
このレコーディングでアルトを担当したジャッキー・マクリーンも言っている。「マイルスは当時、
あまり仕事がなかったので、レコーディングには張り切っていた」。
渋く始めるM1「Dear old Stockholm」、快速で飛ばすM2「Chance it」。必殺のスロー・バラード「Yesterdays」と、力の入った演奏が続く。M6「How deep is the ocean」。冒頭のピアノの入りを
受けて、マイルスのトランペットが朗々と響いていく。どれも素晴らしいトランペット・ミュージックに
なっている。
この1952年録音に、マイルスの状況的なものを聞くとするなら、「マイクの前でしか立っていられない
オレを、どうにかしてくれ」という内心の声、みたいな話になるのかもしれない。どちらにせよ、
この時期にしか聴けない、ハードボイルドでシンプルなマイルスのモダンジャズの音色がそこにある。
1953年セッションになると、ドラムスがケニー・クラークからアート・ブレイキーになる。マイルスは
「ここぞ」という、ピリリとさせたいレコーディングでブレイキーに声をかける。存在感のある、
煽り型のブレイキーに応えてマイルスも元気だが、その分、普通というか、前年の録音で味わえた
寂寥感は薄い。無難な演奏になっている。ただ、必ず1曲必殺のバラード・プレイを吹き込むことは忘れない。「How deep is the ocean」に対応するのが、「I waited for you」。書いたのはガレスピー。
ほとんどピアノとのデュオと言ってもいい、静謐で、リリカルな、名演になっている。
最後の1954年セッションで最も前2つと異なるのは、演奏面よりも、マイルスの自作曲が4曲も
含まれていること。マイルスも自信があったのか、録音技師もルディ・ヴァン・ゲルダーにして、
彼のスタジオで行っている。3セッションに共通するラストのバラードも、ミュートで絶唱と
いうような「It never entered my mind」が収録される。この着地があまりに見事なので、
これら3年間の「不調期からの復活劇」も、マイルスの仕込みだったのかと思いたくなる。
ビバップの時代は、ソリストの力量ですべてを乗り越えていくような音楽で、実際、チャーリー・
パーカーにとってベースやドラムスが誰でどんな演奏だろうと、あまり関係はなかった。
しかしマイルスがここで演ろうとしているのは、もっとアンサンブル全体で音楽を奏でる方法で、
そのためにスペースを作り、それらを支えるリズムを案出し、対応している。この延長上にギル・
エヴァンスとの共同作業があるし、最強のメンバーを集めた自前のコンボ(クインテット)演奏が来る。
こうしてマイルスは、自分のトランペットを最も活かすフォーム(形式)を生み出して、手に入れる。
これをやらずにいられなくさせたのは、マイルスを超える技量、才能を持っていたトランペッター、
クリフォード・ブラウンの登場があったから。クリフォードはまるでそれが自分の使命だったかのように、
鮮やかな演奏と記録を残して、1956年に世を去ってしまう。3年ほどの活動期間しか持たなかったが、
彼の出現で、ジャズには新しい血が注入され、生き返り、新たな生命力が宿った。
マイルスのドラッグ話についていうなら、ここ(1954年)でマイルスは薬物から綺麗に足を洗った
みたいに言われるが、彼はそれ以後も薬やアルコールと無縁ではなく、電化ジャズを始めてシーンから
姿を消す辺りではボロボロの状態になっている。マイルスの生涯と音楽の変遷はドラマチックなので、
リスナーもついその話の上に音楽を乗せたりしてしまうが、それほど単純な絵柄ではない。
なお、3セッションをきちんと時間軸で並べた「コンプリート盤」があるので、購入するならそちらがいい。
Miles Davis, Vol.1
仕様 | 価格 | 新品 | 中古品 |
CD, 限定版, 2023/12/13
"もう一度試してください。" | 生産限定盤 |
—
| ¥1,527 | ¥2,686 |
CD, 限定版, 2019/4/10
"もう一度試してください。" | 限定版 |
—
| ¥3,900 | ¥980 |
CD, CD, リミックス含む, 2001/7/17
"もう一度試してください。" | CD, インポート |
—
| — | ¥143 |
CD, 1986/1/1
"もう一度試してください。" | 1枚組 | — | ¥162 |
CD, インポート, 2001/6/4
"もう一度試してください。" | インポート |
—
| — | ¥4,019 |
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曲目リスト
1 | Dear Old Stockholm |
2 | Chance It |
3 | Donna |
4 | Woody 'n' You |
5 | Yesterdays |
6 | How Deep Is The Ocean |
7 | Chance It |
8 | Donna |
9 | Woody 'n' You |
10 | Take Off |
11 | Lazy Susan |
12 | Leap |
13 | Well You Needn't |
14 | Weirdo |
15 | It Never Entered My Mind |
登録情報
- メーカーにより製造中止になりました : いいえ
- 製品サイズ : 14.91 x 12.8 x 0.99 cm; 96.1 g
- メーカー : Emd/Blue Note
- EAN : 0724353261023
- 商品モデル番号 : 3 3 00532610
- オリジナル盤発売日 : 2001
- SPARSコード : DDD
- レーベル : Emd/Blue Note
- ASIN : B00005LKC1
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 361,385位ミュージック (ミュージックの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年5月20日に日本でレビュー済み
2010年6月14日に日本でレビュー済み
J.J.ジョンソンやジャッキー・マクリーンと演った52年のセッションと、ホレス・シルヴァーやアート・ブレイキーと演った54年の
セッションを一枚にまとめたもの。
前者の時期のマイルスは麻薬に溺れていたので、立ち直った後者の方が音楽的に充実してると思いきや、僕は前者が好きなの。
「Dear Old Stockholm」も「Yesterdays」も「How Deep is the Ocean?」も最高。なんだろう打ちひしがれている時のバラードって
何か深い。それは普段クールでストイックな人であればあるほど、たまにみせる弱さに何か感動してしまう。
精神的に張りつめていたバードが名演「Lover Man」で吹いたしわがれた音色が美しかったように、ここでのマイルスの音色も
情感が深くて心にしみる。
セッションを一枚にまとめたもの。
前者の時期のマイルスは麻薬に溺れていたので、立ち直った後者の方が音楽的に充実してると思いきや、僕は前者が好きなの。
「Dear Old Stockholm」も「Yesterdays」も「How Deep is the Ocean?」も最高。なんだろう打ちひしがれている時のバラードって
何か深い。それは普段クールでストイックな人であればあるほど、たまにみせる弱さに何か感動してしまう。
精神的に張りつめていたバードが名演「Lover Man」で吹いたしわがれた音色が美しかったように、ここでのマイルスの音色も
情感が深くて心にしみる。
2013年4月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
昔々聞いていたCDを再び聞けて幸せです。お店の対応も良いので感心しました。
2014年11月9日に日本でレビュー済み
ふーむ、it never internet my mindは麻薬後の録音かあ・・・・・
どうりで・・・・・・
それにしても、なぜ時系列で曲を並べない?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1. Take Off Miles Davis 3:41 March 6, 1954
2. Weirdo Miles Davis 4:45 March 6, 1954
3. Woody 'n' You Dizzy Gillespie 3:26 May 9, 1952
4. I Waited For You Gil Fuller, Dizzy Gillespie 3:31 April 20, 1953
5. Ray's Idea (alt. take) Gil Fuller, Ray Brown 3:53 April 20, 1953
6. Donna Jackie McLean 3:14 May 9, 1952
Side 2
1. Well, You Needn't Thelonious Monk 5:24 March 6, 1954
2. The Leap Miles Davis 4:32 March 6, 1954
3. Lazy Susan Miles Davis 4:03 March 6, 1954
4. Tempus Fugit (alt. take) Bud Powell 4:01 April 20, 1953
5. It Never Entered My Mind Richard Rodgers, Lorenz Hart 4:01 March 6, 1954
どうりで・・・・・・
それにしても、なぜ時系列で曲を並べない?
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1. Take Off Miles Davis 3:41 March 6, 1954
2. Weirdo Miles Davis 4:45 March 6, 1954
3. Woody 'n' You Dizzy Gillespie 3:26 May 9, 1952
4. I Waited For You Gil Fuller, Dizzy Gillespie 3:31 April 20, 1953
5. Ray's Idea (alt. take) Gil Fuller, Ray Brown 3:53 April 20, 1953
6. Donna Jackie McLean 3:14 May 9, 1952
Side 2
1. Well, You Needn't Thelonious Monk 5:24 March 6, 1954
2. The Leap Miles Davis 4:32 March 6, 1954
3. Lazy Susan Miles Davis 4:03 March 6, 1954
4. Tempus Fugit (alt. take) Bud Powell 4:01 April 20, 1953
5. It Never Entered My Mind Richard Rodgers, Lorenz Hart 4:01 March 6, 1954
2007年1月18日に日本でレビュー済み
先ずこの組み方がいま一つピンとこない。
もちろん音源はblue noteで前半が52年。mcleanとjjの3管で“dear old stockholm”をやっている…。つまり余りによく知られた1500番台冒頭のあれである。で、のこり後半の6曲が54年吹込みの10吋。ワンホーン。ジャケはこちらが採用されている。この盤の題も「vol.1」だから1同士を組んだという事か。前半が有名なため、以下は後半部のレヴュを…。
horace silver trio(percy heath、art blakey)がバック。6曲中4曲がマイルス自作、後はrodgers&hartのバラード曲とmonkの“well you needn't” という構成。54年という時期はそれ程古くないのだが、この1曲のmonkが示唆的だ。milesが彼特有の抽象性と気品を兼ね備えた音世界を生み出すうえでmonkの音楽に何らかのインスパイアを受けたと思う。ミドルからアップテンポばかりで、悪くいえば一本調子の曲調が大半を占めるがアドリブがすでに瀟洒で硬質なmilesの世界で貫かれている。silverもblakeyもそれぞれmilesワールドの1出演者として抑制の効いた渋い演奏に徹している。
ジャケにはやはりレイドマイルスが関わる。上記milesの音世界を幾何学的なデザインと優れた色調で視覚化している。やわらかい線に夢幻的な雰囲気もある。CDサイズとはいえ音を聴きながらじっと眺めてみて欲しい。
もちろん音源はblue noteで前半が52年。mcleanとjjの3管で“dear old stockholm”をやっている…。つまり余りによく知られた1500番台冒頭のあれである。で、のこり後半の6曲が54年吹込みの10吋。ワンホーン。ジャケはこちらが採用されている。この盤の題も「vol.1」だから1同士を組んだという事か。前半が有名なため、以下は後半部のレヴュを…。
horace silver trio(percy heath、art blakey)がバック。6曲中4曲がマイルス自作、後はrodgers&hartのバラード曲とmonkの“well you needn't” という構成。54年という時期はそれ程古くないのだが、この1曲のmonkが示唆的だ。milesが彼特有の抽象性と気品を兼ね備えた音世界を生み出すうえでmonkの音楽に何らかのインスパイアを受けたと思う。ミドルからアップテンポばかりで、悪くいえば一本調子の曲調が大半を占めるがアドリブがすでに瀟洒で硬質なmilesの世界で貫かれている。silverもblakeyもそれぞれmilesワールドの1出演者として抑制の効いた渋い演奏に徹している。
ジャケにはやはりレイドマイルスが関わる。上記milesの音世界を幾何学的なデザインと優れた色調で視覚化している。やわらかい線に夢幻的な雰囲気もある。CDサイズとはいえ音を聴きながらじっと眺めてみて欲しい。
2003年11月24日に日本でレビュー済み
マイルスは時代を先取りするリーダーに成長するが、この録音はそれ以前、1952年(マイルスは薬漬け)から54年(薬を自ら断ち切った後)の録音が聴ける。ジャンキーのマイルスと立ち直ったマイルスを聴き比べてみても、どちらが良いとは言えないほど、録音時のマイルスは、頑張っている。同時期にプレスティッジに録音を残しているが、この後、1955年に結成したコルトレーン入団後のクインテットで、その名を残す事になる。飛翔直前のこの録音は、様々なメンバーと試行錯誤しながらマイルスワールドを形成していく過程が分かるという意味でも貴重な、素晴らしい録音である。アルフレッド・ライオンに感謝!
2008年8月18日に日本でレビュー済み
1952年5月9日、1953年4月20日録音。
本作はブルーノートが1955年に当時主流だった10インチ盤に変えて12インチLPを発売する時に真っ先に発売されたものである(vol.1・2)。マイルスのレコーディングからvol.1には52年セッションから6曲と53年セッションから3曲、vol.2には52年セッションの2曲と53年のセッション3曲、そして54年3月6日のセッション6曲全曲が収められている。
マイルスが自らの地位を確立した時期というのは1950年代の半ばである。『クールの誕生』が1950年3月9日のニューヨークの録音であるからして、vol.1・2を録音したこの時期というのはまさにマイルスが試行錯誤の中自らのスタイルを確立するまっただ中であった。そういう意味でこのあたりの録音は実に興味深く、マイルスの音楽を知る意味で必要不可欠な時代であると断言出来るだろう。
重要なのは未だマイルスのスタイルというのがそのコンボに浸透していないと言う点だろう。それでもマイルスのトランペットは光を増しつつあるのが十二分に聴き取れる。
今では24ビットでRuby van Gelderエディションで聴くことが出来る。何て幸せな時代なのだろうとつくづく思う。
本作はブルーノートが1955年に当時主流だった10インチ盤に変えて12インチLPを発売する時に真っ先に発売されたものである(vol.1・2)。マイルスのレコーディングからvol.1には52年セッションから6曲と53年セッションから3曲、vol.2には52年セッションの2曲と53年のセッション3曲、そして54年3月6日のセッション6曲全曲が収められている。
マイルスが自らの地位を確立した時期というのは1950年代の半ばである。『クールの誕生』が1950年3月9日のニューヨークの録音であるからして、vol.1・2を録音したこの時期というのはまさにマイルスが試行錯誤の中自らのスタイルを確立するまっただ中であった。そういう意味でこのあたりの録音は実に興味深く、マイルスの音楽を知る意味で必要不可欠な時代であると断言出来るだろう。
重要なのは未だマイルスのスタイルというのがそのコンボに浸透していないと言う点だろう。それでもマイルスのトランペットは光を増しつつあるのが十二分に聴き取れる。
今では24ビットでRuby van Gelderエディションで聴くことが出来る。何て幸せな時代なのだろうとつくづく思う。
2019年8月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
整理上は二枚組に分があるとは思うが、追加曲が同じなのでお薦めはこちら。(曲の配置は異なる)
音質は二枚組との比較では無いが、"ブルーノート" の個性的なサウンドを満喫できる上質なリマスターが施されている。
追加曲はオリヂナルにある "リバーブ" 処理が無いので臨場感があり、オリヂナルテイクとの違いが解り易く比較を楽しめるものとなっている。
デビューから7年と9年目、既にスタイリストとして個性が遺憾なく際立っているのが確認出来る作品だ。
音質は二枚組との比較では無いが、"ブルーノート" の個性的なサウンドを満喫できる上質なリマスターが施されている。
追加曲はオリヂナルにある "リバーブ" 処理が無いので臨場感があり、オリヂナルテイクとの違いが解り易く比較を楽しめるものとなっている。
デビューから7年と9年目、既にスタイリストとして個性が遺憾なく際立っているのが確認出来る作品だ。
他の国からのトップレビュー
José ramón
5つ星のうち4.0
Un disco imprescindible
2020年6月23日にスペインでレビュー済みAmazonで購入
Un gran disco a un excelente precio que por contrapartida al mismo carece de toda información
Ribera C
5つ星のうち5.0
Awesome Miles Davis Quintet.
2018年5月5日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
A must have in my collection. Thank you
Mr Bee
5つ星のうち5.0
Chance it!
2013年9月21日に英国でレビュー済みAmazonで購入
This CD and volume 2 contain all Miles' recordings for Blue Note in three sessions from 1952-4. All three sessions featured great melodic invention, impeccable musicianship, and if I prefer Vol 1 to 2 it's simply that there's more of Miles' lyricism on this one, and they play more standards. From the start of Dear Old Stockholm to the end of It Never Entered My Mind there isn't a note out of place. The recording is incredibly clear and it's hard to believe these are 60 year old recordings.
Danny
5つ星のうち4.0
Miles at his best.
2022年5月29日に英国でレビュー済みAmazonで購入
1950s Miles at his best.
yajiyaji
5つ星のうち5.0
yajiyaji
2009年2月9日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
I have been looking for this CD that Miles Davis
recorded at his earlier age.
I like this energetic and stimulus sounds in CD.
recorded at his earlier age.
I like this energetic and stimulus sounds in CD.