フレデリック・ディーリアス(Frederick Delius 1862.01.29-1934.06.10)はドイツ系のイギリスの作曲家ですが、実際はパリの郊外に住んで創作活動を行っていました。当時イギリスではパートソング(ホモフォニー様式の無伴奏合唱曲)が流行しており、エルガー、スタンフォードほか著名な作曲が多くの素晴らしい作品を残しています。
ディーリアスの特徴は、自然の中に移ろう光と影、風のささやき、木々や花の風情などを控えめな描写で音楽として表現している点でしょう。それが日本人の感性によく合い、今で言うところのヒーリング系の作曲家と言えます。ことに夏の風情や田舎の夕暮れの描写などに優れ、難しい技法で書いていない素朴な美しさをもった合唱曲となっています。
「2つの無伴奏パートソング」の作品が大好きです。編成は混声6部合唱(SATTBB)で、2曲目にはテノール・ソロが入ります。この2曲は、このCDの3曲目にあたる「夏の夜、水の上にて歌える(To be sung of a summer night on the water)」で、これは1917年に書かれており、4曲目の「夕日の輝きが城壁に落ち(The splendour falls on castle walls)」は1923年に作曲されました。これは後に フェンビーが弦楽合奏用に編曲して「2枚の水彩画 (Two aquarelles) 」と名づけています。
なお、このCDの1曲目は「夏至の歌(Midsummer song)」で、2曲目は「クレイグ・ドゥーの山頂にて(On Craig Dhu)」と呼ばれる無伴奏混声合唱曲が収録されています。どちらもディーリアスらしい陰影のあるたおやかな曲想を持っています。
この輸入盤も購入が難しくなっていますが、もし可能ならば是非聴いて欲しいですね。