95年に日本国内で「ショーシャンクの空に」が口コミでヒットし、結果、一般の認知度もやや高めで、監督であったフランク・ダラボンが本作の「製作と脚本を兼任した」というのが、本作の2001年9月発売当時の「一番の売り」だったというのが、今振り返ると「時代」の香りを感じてしまいます。
それに加え製作総指揮は、リメイク版の鑑「ブロブ/宇宙からの不明物体」をモノにし、そこで脚本を執筆したダラボンとは繋がりが出来ているチャック・ラッセル。
監督のD・J・カルーソは本作以後にハリウッド娯楽作品のメインストリートを着実に歩み、最近だと「トリプルX/再起動」を演出するにまでに至るワケだけど、本作監督当時の実績は皆無に等しく、集客の吸引力は無しと判断され、まったく無視同然な扱いなのはしょうがないけれど、本作が好きだった私としては監督が後に出世してくれて嬉しい。
始まりの地は、オクラホマ。
刑務官の監視下で野外労働の任につかされている囚人たちが、炎天下に汗をかきながら道路脇を掘り進めている場面は、「48時間」の冒頭場面と大変酷似していて面白いです。
それに続き、凶悪犯数人が監視の隙をみて脱獄を企てる展開まで「まんま」なのだ。
本作はHBO系列で放映された「テレビ映画」のようだけど、銃弾をうけて派手に出血する暴力場面にも気合いが入っているし、直後に囚人輸送バスが爆発炎上するなど劇映画と遜色ない画作りがなされているので、テレビ放映用に製作されたと聞かないと、普通に映画館で上映されたと思い違いしかねない感じです。
舞台はテキサスに移り、保安官の一人娘サラと交際している主人公/ジョニー(パトリック・マルドゥーン)のさえない日常が紹介され、ジョニーも彼の父親も「負け犬」と見下す保安官からは娘との交際を断固拒否されていて、サラに片想いな保安官補のノーム(ジェイク・ビジー)からは日常的に嫌がらせをうけていた。
交際を禁じても家を抜け出しジョニーと密会する娘に苛立った保安官は、娘を伴いジョニーの実家兼職場である町唯一のガソリンスタンドに乗り込み「娘に二度と近寄るな!」と脅し半分な警告を突きつけ、立ち去る。
娘との間に険悪な空気が漂う車内...保安官は前方を走行する車に不審な点を発見し停車を求めるが、車には先の脱獄犯たちが乗っていたために保安官は問答無用で射殺され、パトカーに同乗していたサラは人質となってしまう。
一方的に交際を否定されたジョニーは再度話し合うため保安官とサラの後を追っていて、脱獄犯たちの凶行とサラが拉致られる瞬間を目撃するが、脱獄犯が放つ銃弾を避けて跳びこんだ道路下で岩に頭を打ちつけ気を失う。
保安官とジョニーのトラブルを伝え聞いたノームも野次馬根性丸出しで後を追って来て保安官の遺体を発見し、日頃の偏見から即座に「話し合いがこじれた結果、ジョニーが保安官を射殺」と勝手に判断、意識を取り戻し現場に戻って来たジョニーを殺人犯として捕らえようとするも逃げられる。
サラを人質に逃走した脱獄犯たちをジョニーが、保安官を射殺した犯人としてノームがジョニーを追いかける二つの追跡戦がスピード無制限で始まるのだった。
「48時間」に似た冒頭から「これぞ!B級アクション映画」的に大変快調で、多くの場面を車の猛追に費やした物語構成の動線も一直線であり、犯人たちがメキシコ国境を越えてしまうまでに追い着かねばならない張りつめたタイムリミットぎりぎりの緊張感も感じれる。
それからジョニーがヒーローでもなんでもなく、只々恋人を奪還したい一心で危険にやや鈍感なままに突き進み、策もなく、時に窮地に陥りながらも「がむしゃらであきらめない根性」を武器に立ち向かう姿が「負け犬なりの意地」をみせていてイイのです。
サラを人質に逃走を続ける脱獄犯たちにも凄味があって、サデスティックに殺人を重ねるリーダー格のピーター・グリーンに、エキセントリックな空気を漂わせるケヴィン・J・オコーナー、ジョニーの父親役にフランク・ダラボン組の常連俳優ジェフリー・デマンも顔を見せてくれるのも嬉しい。
続き日本では劇場未公開ながら...「初の劇場用映画」で、奇妙な雰囲気をもつ復讐譚「ソルトン・シー」でもバツグンな演出を見せ、D・J・カルーソは後々の(たぶんに大味な)大作よりも初期作の方が味わい深い切り口で物語を語ってくれていたと個人的には感じています。
CDケース・タイプのジュエルでしかパッケージ化されていない初期のDVD化作品ですが(レンタルもVHSだけだと思う)、画質に問題もなく、視聴に支障はありませんでした。
またAmazonの商品説明では記載漏れですが、全編「日本語吹替え」された音声も収録されていて、画角は「4:3」スタンダードです。