ドイツのヘヴィメタルバンドHELLOWEENの6thフルアルバム。1994年発表
解雇されたマイケル・キスクの代わりに加入した、アンディ・デリスの声をどう捉えるかでまず評価は大きく変わるだろうが、好みはともかくこのアルバムでのアンディの活躍ぶりに関しては文句のつけどころがない。
まず、彼の作る曲が良い。PINC CREAM69時代からの作曲センスを遺憾なく発揮した彼のハードロックチューンはメロディが抜群に良く、ヴァイキー作曲の楽曲群とも実によく調和し溶け込んでおり「これもHELLOWEEN」と自然に思わせてくれている。
またボーカルに関しても、キスクのような伸びやかさはないものの、パワーと哀愁感を同時に併せ持つ超個性的な声を持っているのは周知のうえだったが、これがHELLOWEENのシリアスなメタルによくフィットした。
ヴァイキー作曲、哀愁の疾走メタルチューン"Where the Rain Grows"などはその真骨頂。キスクと共に脱退したインゴの後任として加入したウリ・カッシュのドラムソロから始まるこの曲は、まさに新時代のHELLOWEENを象徴するウルトラ名曲だ。ビデオが相変わらずシュールだけど・・・(笑)
弦楽器隊が『Walls Of Jericho』時代の機材を持ち込んだこともあり、サウンドは過去2枚以上に硬質感を増しており「HELLOWEENがヘヴィメタルに戻ってきた!」と当時は何かと話題になっていたようだが、実は本作の楽曲自体はそれほどメタリックではなく、どちらかと言うとハードロック調の曲が多い。
疾走曲は前述含め2曲だけ(ボートラ除く)で、何なら前々作のPinc Bubblesの方が速い曲は多かったくらいなので、案外前作『Chameleon』の延長上にあるように思えなくもない。
特に本作収録のヴァイキーの曲の数曲はもともとキスクがいる時期に書かれたものだった、という発言も出ており、意図的にこのアルバムをメタリックにしようという発想はまだ無かったのだと思われる。
おそらくバンドが生まれ変わったものの、まだ手探りな状態だったこと、元々ハードロックを得意とするメンバーが多かったことなどが要因ではないかと思う。
良い曲が多いアルバムではあるものの、シングルになった数曲以外は彼らのカタログの中では若干地味な印象を受けるのはそのせいか。
本格的にパワーメタルサウンドに踏みこむのは次作からとなる。
蛇足だが、本作のリマスター版は未聴なのだが、オリジナルの本作は1994年当時にヨーロッパのスタジオで人気だったサウンドで、当時はあまり気にならなかったものの、2010年代の耳で聴くと結構しょぼいです。
最近ファンになって、さかのぼってアルバムを聴く人はその点留意してね。