2001年10月リリース。the pillows、9枚目のオリジナルアルバム『Smile』
同年2月にベストアルバム『Fool on the planet』をリリースして以来、初めてのオリジナルアルバムとなる。
主観的な部分も入るが、the pillowsの黄金期は5枚目のアルバム『Please Mr.Lostman』(97年1月リリース)から始まり、上述したベストアルバム『Fool on the planet』のリリースをもって一区切りとされている(実際にバンドの代表曲も黄金期に集中している)。
では、『Smile』以降の作品はダメなのかと問われたら「そんなわけがない」と声を大きくして言いたい。
楽曲のクオリティは『Smile』以降も変わらず維持しており、個人的にこの時期からバンドは「黄金期」から「円熟期」に移行したと思っている。
肝心のアルバムの中身について触れていくと、良い曲も当然あるが他のアルバムと比較して少々地味な立ち位置になっている。
the pillows王道の軽快なロック曲が多くを占めているが、シングル曲が無いこと、全体を通してアルバムの音が若干控えめであること、表題曲の「Smile」が問題作であること(2021年のアルバム再現ツアーでも山中自ら「問題作」と言ってしまった)、さらに前作の『HAPPY BIVOUAC』次作『Thank you,my twilight』が高い評価を得たアルバムとなり、それに挟まれる形で相対的に地味なポジションになってしまったと思っている。
個人的にオススメしたいのは、アルバムの半分を占めてしまうが以下の6曲。
「WAITING AT THE BUSSTOP」
落ち着いた感じのAメロから一転、サビで一気に爆発する序盤にふさわしい軽快なロックナンバー。
裏でグワングワンと鳴っているベースや、サビに入る直前で狂ったようにかき鳴らすギターが個人的に好き。
「この世の果てまで」
アルバムの中で最も認知度が高く、現在のライブでも積極的に演奏されているthe pillowsの王道のナンバー。
後のベスト盤・2枚のトリビュート盤にも選出され、30周年の横浜アリーナ公演でもオープニングを飾った。
もともとシングル曲で出す予定だったが、レコード会社等の都合でリリースが叶わなかったらしい。
「Monster C.C」「Vain dog (in rain drop)」
『Smile』というアルバムの個性を彩っているミディアムナンバー。ちゃんとロックだけど、良い意味で渋い感じのアレンジになっている。
the pillowsでこのようなタイプの楽曲はあまり無いので、個人的に貴重だと思ってる。何度か聞いてると味が出てくるタイプの楽曲。
「日々のうた」
アルバムの終盤でサラっと入ってくる上質なロックナンバー。アルバムの中で「これが好き」というコメントもよく見かける。
後のベスト盤にも未収録なので、まさに「隠れた名曲」という立ち位置にあると思う。
「Smile」
表題曲にして問題作。序盤はゆったりとした曲調だが、途中から狂ったように豹変し、終盤に再びゆっくり戻るという構成になっている。
狂乱中の歌詞もそれなりに過激で、ボーカルもかなり狂ったように歌っている。the pillowsで攻めた歌詞の曲はチラホラあるが、大体は英語にしてるし、歌い方もストレートな感じなので、あまり見かけない楽曲構成と相まって問題作扱いになってしまったのだと思う。
個人的にはかなり好きな曲で、特に終盤のゆっくりしたテンポに切り替わる瞬間のギターは何度聞いても鳥肌が立つ。