この作品が発表された1970年代初頭という時期は、スティーヴィー・ワンダーなどに代表されるニュー・ソウルの台頭や、ファンク・ムーヴメントの台頭、さらにフィリー・ソウルに代表されるような、ソウルのメロウ化の動きが活発となっていたころに当たるが、本作ではファンクっぽいアレンジの曲や、ニュー・ソウルの影響を受けたような曲は、全くない。プロデューサーはジム・ステュアート(スタックスの設立者)とブッカー・T&MGズのアル・ジャクスン・ジュニアだが、そのプロデュースは、まさしくメンフィス・ソウルのレーベルとしての、スタックスの誇りと意地を示した作品として本作を仕上げている。冒頭の8分以上に及ぶ“I Want To Be Loved”から、その熱く咆えるヴォーカルの迫力に唸らされてしまう。 “Don't Take My Sunshine”や“I'm Loving You More Everyday”など、じっくりと時間をかけて熱く盛り上がっていくスロウ・ナンバーが抜群の出来を誇る。 ミディアムの“All Day Preachin'”や“Get Up About Yourself”なども目立たないものの、なかなか味わい深い。歌の味わいを完全に引き立てているバックの演奏も素晴らしい。各人のヴォーカルが対等にぶつかり合っていくことで生み出される強力な磁場。メンフィス・ソウルの魅力が凝縮された、とことんディープでソウルフルな素晴らしさ。是非とも体感してほしい。