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冒頭から、ボストン響らしい均整の取れたしなやかな肉質感が伝わってくる。実の詰まった密度の濃い音が、R・シュトラウスの緻密で華麗な管弦楽法をあますところなく堪能させてくれる。作曲者が作り上げた雄弁な物語が、小澤という名人の語り口によって、さらに生き生きと細部まで描かれ、その口調には聞き惚れるばかりだ。あるときは輝かしく、あるときは陶酔的でロマンティックに。特に、カンタービレに歌いつつ生涯を振り返るかのような後半部の夕暮れのような描写は見事。ここでのヨーヨー・マのチェロは小澤の懐に包み込まれている。
1984年の録音だから、当時のヨーヨーは29歳。自分が一歩も二歩も前に出ようとするのではなく、全体の中にバランスよく溶け込もうとしているようだ。静的な独白部分はさすがに聴かせる。心に響く演奏だ。シェーンベルクは18世紀初頭のウィーンの作曲家マティアス・ゲオルグ・モンのチェンバロ協奏曲を自由に改作・編曲したもので、明快で聴きやすく愉快な曲。親しみやすさに満ちた小澤の美点がさらに遺憾なく発揮されている。難技巧の箇所もサラリと乗り越えていくヨーヨーのチェロも、一層存在感がある。1980年代の2人の記念碑的な共演として、忘れられないディスクである。(林田直樹)
メディア掲載レビューほか
ヨーヨー・マの80年代の名盤が価格を下げて再登場。盟友・小澤征爾との共演で鮮明な「ドン・キホーテ」を描く。シェーンベルクの協奏曲は、18世紀のモンのチェンバロ協奏曲を編曲したもの。
-- 内容(「CDジャーナル」データベースより)