このUHQCD盤(UCCW-9015)はウェストミンスター創立70周年を記念して発売されたもので、私はこれを購入するまでは、旧版(UCCW-3033)を愛聴していましたが、他のディスクでUHQCDの良さを実感していたので、迷わず購入しました。期待に違わず、音質の向上を実感し、以前に増して楽しんでいます。
大きな違いは、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の弦の表情がより明瞭に伝わってくる点だと思います。旧版は弦の響きに硬さがあり、これが弦の表情をストレートに伝える邪魔をしていたように思います。その硬さ、付帯音のようなものが最小化され、柔らかな響きになったと感じます。
当レビュー欄で「愁いを帯びた」と評されているウラッハのクラリネットも、角がとれ、倍音を含む響きが、より自然に聞こえて来るようです。第2楽章で深々とした沈着の中から立ち現れるクラリネットの上昇音形は、諦めの底から滲み出る、天界への憧憬を思わせ、モーツァルトと交信しているような錯覚すら覚えます。
カップリングされているブラームスのクラリネット五重奏曲も、独奏楽器とアンサンブルが複雑に絡み合い、素人の私は感嘆するばかりです。解説で室田尚子氏は「悲哀の底に潜む諦めと、それでもなおにじみ出る憧れの色彩を漂わせた」傑作と書いていますが、音形は下降形が多く、エンディングも第1楽章のテーマに戻り、短調の輪を描いているように感じます。