ステージがまずあって、前回のポップハート・ツアーの象徴でも最新アルバムの象徴でもあるハートが花道として、ステージと前方の観客を取り囲んでいます。その点、セットは「ズーTV」、「ポップハート」と派手な“みやび”が続いたあとの“わびさび”といった感じです。とはいえ、ステージングは、演奏を主体としたロック最高のものであり、さらにU2に対する作り手の敬意を感じさせる映像が本作品を最高のDVDに仕上げています。
さて、演奏以外にも感激しました。故ジョーイ・ラモーンが最期に聴いたという「イン・ア・リトル・ホワイル」をトリビュート(U2はその後ラモーンズのトリビュート・アルバムに参加した)。ボノが、兄弟的なバンド、ラモーンズを意識して、メンバー紹介を「ファミリー・ビジネス」ということばで始めたさい、現在のマネージャーに渡りをつけたアダムではなく、1976年、学校の掲示板にバンド・メンバー募集を出したラリーのほうを、「ぼくらにはじめて仕事をくれて、今も同じ職にとどまらせている男」とボノが紹介したこと、さらに、その募集のあとほどなく現在の4人に絞られて以来、彼らが25年以上メンバーを替えていないことに思い至って涙。『ボウリング・フォー・コロンバイン』に先立つ、チャールトン・へストン批判に感動。最後、アウン・サン・スー・チー女史に捧げた「ウォーク・オン」に、U2の四人で変わらないまま変わり続ける歩みを感じて涙。
ただし、MC以外のオリジナル曲と違う歌詞の変更・挿入(たとえば「サンデイ・ブラッディ・サンデイ」の間奏でボノが口ずさんだのは、ボブ・マーリィ&ザ・ウェイラーズ「ゲット・アップ,スタンド・アップ」)について字幕・解説がないので、たぶんU2のメッセージの半分は理解できないこと、そしてディスク2は内容的にはおまけ/0.2枚分程度であることには正直がっかりしました。