コマーシャルでも使われたアカペラの「トムズ・ダイナ」、親による幼児虐待を幼児の視点で歌って大ヒットした「ルカ」など、スザンヌ・ベガ入門に最適です。 スザンヌ・ベガの曲の中にはいわゆる普通のラブソングは少ないのですが、そんな中「ジプシー」は貴重な美しいバラードです。こういう曲が少ないだけに普通っぽいメロディーが逆に引き立つのかもしれません。それでも表現は巧みです。Curl me up inside you and let me hear you through the heat (私を包み込んで、そして温もりを通して語りかけて)スザンヌにしてはソフトなタッチで歌い上げます。 逆に「瞳」や「孤独」はスザンヌのシャープな語り口が前面に出た、結構激しいフォークロックです。「孤独」などを聞くとスザンヌは詞の内容だけでなく、詞の響きにも相当こだわっていることがわかります。強勢の部分、タイトルのSolitude StandingはSで韻を踏んでますし、サビの終わりの表現Flower with a FlameもFで韻を踏ませています。スザンヌが録音時にマイクの近くで歌っているためか、特にこういう子音が耳に残るのです。そのようにして歯切れ良さと生々しさとデリケートさが同居した奇妙な味わいが楽しめます。 全体として、シェリル・クロウとかシャナイア・トゥエインみたいなワイルドなボーカリストとは対極的な、都会的で繊細な味わいが堪能できる一枚です。