「テン・ニューソングズ」……「10の新しい歌」、なんと突き放したような
アルバムタイトルだろう。
「ポピュラープロブレム」(ありふれた問題)が出て、
改めて10数年前のこのアルバムと交互に、流しっぱなしにしている。
ほとんど曲調の変わらない10の楽曲が、女性コーラスも交えながら、
70歳近くのコーエンの、かすれた、ささやくような声で続く。
同じような曲なのに、聞き込んでいくとすべて、キッチリ違う。
従わずにはいられない
心の奥底の決定のために
ぼくたちの宗教の残っている部分のために
ぼくは声を上げ祈る――
この豊かな国の光がいつの日か
真実を照らし出しますように
(「ザ・ランド・オブ・ブレンディ」)
宗教的であり、哲学的でもある歌詞が、
あの声と合っているのだ。
何回も聴いて、どんどんはまっていくアルバムである。
英語のわかる人は輸入盤でもいいが、彼の詩は難解すぎるので、
やはり対訳歌詞カードつきがお勧めである。