Amazonレビュー
インストゥルメンタル・ポップ史上もっともヒットした3枚は、ヒュー・マセケラ、ハーブ・アルパート、チャック・マンジョーネというトランペッターたちのレコーディング作品だ。ボッティのこの4作目には、その伝説と肩を並べるほどのキャッチーで軽快なメロディーが申し分なく備わっている。だが、ヴォーカル曲2曲のうちの1曲「All Would Envy」は、かつてツアーに同行したスティングの作曲によってブラジル風の圧倒的な陽気さがもたらされ、ショーン・コルヴィンが忘れがたい歌声を聞かせてくれるものの、セールスやラジオでのエアプレイの足を引っ張るかもしれない。
前述の名だたるトランペット・プレイヤーたちと同じく、ボッティは「Miami Overnight」「Streets Ahead」といったグルーヴ感あふれるアップビートなナンバーでリズムを強調している。とりわけ「Blue Horizon」ではヨーロッパ調のドラムンベース・サウンドをはっきりと打ち出し、ビリー・チャイルズによる必殺のキーボードと、本作のプロデューサーのキッパーをフィーチャーしている。アルパートの影響を感じさせる「Through an Open Window」はロック・ギターとなめらかなメロディーによって、おそらく多くのリスナーが本作で最高と思えるトラックだ。その他の収録曲の大半では、スムースジャズのラジオ局やハリウッド映画のサントラ盤にボッティを登場せしめた、あのキーボードをたっぷり詰めこんだムードあるサウンドの中を、歯切れよく澄みきった音色が貫いている。（Mark Ruffin, Amazon.com）
メディア掲載レビューほか
スムース・ジャズのプリンスとして脚光を浴びるトランペット奏者、移籍第1弾、通算4枚目のアルバム。これまでスムース・ジャズにつきまとう商業主義の臭いと似たりよったりの定型化されたサウンドに、どうしても否定的にならざるを得なかった。しかしこのアルバムは目から鱗。スムース・ジャズがこれほどまでにクリエイティヴになりうると誰が想像したであろうか。音楽の質はフォーマットに左右されるものではなく、真のミュージシャンシップを備えた音楽家であれば、わずか一音でもオリジナリティにあふれる色彩豊かな音楽景観を描くことができるのだという事実を、ボッティは見事に証明して見せた。
ポール・サイモン、ジョニ・ミッチェル、スティングらビッグ・ネームからひっきりなしにラブ・コールを受けるボッティのプレイヤーとしての腕前の確かさは音楽関係者にはすでによく知られていた。しかしこの作品は、大成功をおさめてきた過去のアルバムと一線を画す、驚きに満ちたサウンドスケープを提供している。抑制の利いたトランペットの調べは、どんなに熱いプレイよりも繊細な情感を豊かにコミュニケートし、聴き手の心にそっと残像を刻む。グッド・メロディ、心地よいグルーヴ、シンプリシティというスムース・ジャズの定石を踏まえつつも、ボッティの世界はどこを切っても新鮮味とオリジナリティにあふれている。技巧的であることを避け、選び抜いた音で構築するその宇宙の静寂は、禅の境地にさえ通じるもののように思える。人間としてのエゴイズムを排除し、ただひたすらに音に魂を込めるとき、音楽は昇華され、別世界に飛翔する。クールでスムースな感触はミステリアスであるかと思えば官能的、そして次の瞬間には天使の羽根のようにそっと心を癒す。静謐なたたずまいに織り込まれたスピリチュアリズムは、音楽という形の美しい祈りにほかならない。余談ながら、ボッティは俳優デビューするほどの美青年。その甘いルックスと雰囲気のあるトランペットにころりといかなければ、女をやめた方がいい。 (工藤由美) --- 2002年01月号 -- 内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)
ポール・サイモンやスティングらの信頼も厚い、スムース・ジャズ~インストゥルメンタル・ポップの俊英トランペッター、クリス・ボッティ通算4作目のリーダー作。詩的でまろやかな音色が美しい。
-- 内容（「CDジャーナル」データベースより）
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