何年か前、マーヴィン・ゲイにすっかりハマった時期があって、その当時売られてた彼のCDはひと通り買って聴いたりしたけれど、そんな中で出逢い、そのキュートかつ力強い歌声のとりこになったのが、60年代後半に彼とコンビを組み、数々のヒットを放ったデュエット・パートナーであるタミー・テレル(1970年3月、脳腫瘍のため24才の若さで死去)。マーヴィンの歴史を語る上でも、彼女の存在は決して忘れるわけにはいかない。この2枚組は、そんなふたりがデュエットで発表したすべての楽曲を、オリジナル・アルバムと同じ曲順に並べ、さらに未発表の曲/テイクなどを加えたもの。いくつかの曲の前後には、ちょっとしたお楽しみがあったりもする。デュエットとしてのレアな音源は、ディスク1の25から27。27は「なんでこんなにいい曲がオクラ入りになったの?」クラスの未発表曲。
歌声のバランス、コンビネーションのよさ、聴いていてかもし出される快い“恋人っぽさ”と、どこをとってもふたりのデュオは最高。楽曲の粒も揃っているし、もちろんバックの演奏は『永遠のモータウン』で広く知られるようになったファンク・ブラザーズなわけで、文句のつけようもない。
もちろん、ディスク2前半の、アルバム“Easy”収録曲の大部分に関しては、病状の進行したタミーのかわりにヴァレリー・シンプソンが、声質から発音のクセからすっかりタミーになりきってマーヴィンと共演している、という事情はあるものの(“栗貫ルパン”みたいな感じか。マーヴィンのノリもいまいち。詳しくはブックレットのライナーを参照)、それ込みでもやはり「最高!」、と言わせていただきたい。
そしてディスク2の後半は、タミーのソロ・シングルからの4曲、および未発表だったタミーによるソロ・ヴァージョン集となっており、彼女の歌声の魅力をたっぷりと楽しめる、これまた素晴らしい贈り物だ。