対戦格闘ゲームの歴史に燦然と輝くあのヒロインを、新解釈で描くノベルゲームです。
ミニゲームとかクイズとかは正直言って余計な感じもしますが(熊との対決は別として)、
単調になるのを避けたいという目的はわかります。
キャラデザインの雰囲気が過去の作品とやや違うので、
『サムライスピリッツ』シリーズで見慣れた人ほど違和感を感じるのかも。
それは彼女を「神(カムイ)の戦士」、すなわち神話的で神秘的な女英雄として見るか、
それとも等身大の「苦悩する少女」として見るかという、観点の違いが表れたものだと考えます。
本作の物語は、最初に提示された避け得ない悲劇へ進んでいくという手法を取っています。
プレイヤーだけがあらかじめ破滅の予感を抱えながら読み進むからこそ、
何も知らないリムルルやマナリ、ヤンタムゥたちの振る舞いに切なさを感じるのでしょう。
古代ギリシャの昔から、人間は悲劇を書き、読んで(あるいは観て)きました。
人の思いがすれ違って引き起こされる悲劇にこそ、胸を打つものがあるからです。
ナコルルとリムルル、ナコルルとミカト、マナリとヤンタムゥとナコルル。
みんな相手を思いやっていて、そこに悪意はかけらもなく――ゆえに悲劇。
だからこそ、静かに噛み締め、そして受け容れましょう。
悲劇を乗り越えてミカトが受け取った「あのひとからのおくりもの」を。