Amazonレビュー
本作で賞賛できるのは、メデスキ、マーチン&ウッドの職人芸がスタイリッシュで抑制された音を押し進めていることと、その一方で、これまでほど楽しい音楽でないこと、あるいは、この大人気のトリオがそう思っているかもしれないことを認めていることだ。クロスオーバー・サウンドをかすかに織りこんだ豊かなグルーブと、バックで支える不気味なエレクトロニックに満ちた本作は、生き生きとした音のごった煮と言える。キーボードのジョン・メデスキ、ドラムのビリー・マーチン、ベースのクリス・ウッドは今一度バンド独自の世界に立ち戻り、ジャムバンドとしてのベースを巧みに広げている。そして、ブルックリンを拠点に活動するアフロビート・オーケストラの5人編成のホーン・セクションや、ターンテブリストのDJオリーブとDJ P Love、それに歌詞付きの曲のために、南部ロックの変わり者ブルース・ハンプトンのいかついボーカルをフィーチャーしている。「Pappy Check」やブッカー・T風の「Smoke」のように、メデスキがハモンド・オルガンを踏み鳴らし、トリオが得意のソウルフルな即興を奏でれば、それで何もかも十分なはずだ。けれども、メデスキがメロトロンや小型のムーブ、アープといった部屋一杯におかれた他の楽器に手を出してみても、ヴァラエティー豊かなサウンドにはなっていない。さまざまなエフェクトに満ちたトラックは、彼らならではの抽象的なロジックにはまっているのかもしれない。けれども「Off the Table」の卓球の試合のようなプレイには抗えない魅力がある。つまり、本作の最大の聴きどころは細かな部分にあるのだ。そのことに気づくには、ヘッドフォンの助けがあると効果的だろう。(Lloyd Sachs, Amazon.co.uk)