イタリアのプログレバンドSEMIRAMISの73年作。BIGLIETTO PER LINFERNOなどと並び称されるヘヴィシンフォの名盤。オザンナ、ムゼオなどに通じる邪教的なイメージもある。ドラマチックな歌唱、表情豊かなキーボード、ギターがけたたましく暴れ回るパートと素朴で優美なアコギのフォーク風のパートがめまぐるしく入れ代わり、強烈な美と邪悪の対比、破天荒な展開を見せる。曲調の変化は少々強引すぎる所もあるが、それがイタリアらしいとも言える。美しい旋律が散りばめられつつも、それらが奇妙につなぎ合わされ異形の姿で暴走…混沌、それでいて後味は妙にみずみずしく爽やかだったり…何とも不思議な作品。どの曲もちょっと聴いただけでは理解不能。 「古物商の家」はトラッド・フォーク調の雰囲気にギターが騒々しく飛び込んできて、動と静が交錯するが、牧歌的で雄大な盛り上がりへと変化していく。「ルナ・パーク」は忙しく変転する激しい曲調だが、クラシカルで哀愁が滲む。ピアノが印象的。「ガラスの動物園」は優雅な趣の冒頭だが、それがオルガンに飲まれギターが暴力的にうねる。再び柔和な表情を取り戻すが、その後はキラキラした奇怪な音の空間に閉じ込められる。「混雑した道を通って」は題名通り喧騒に満ちた街路を走り抜けるようなイメージ。途中のヨーロピアンなロマンあふれるアコギソロにうっとりする。「紙細工の門のうしろに」は前半の美しい歌が印象的。重苦しく邪悪な展開が現れるが最終的にはシンフォニックで壮大な帰結に持っていく。「フラッツ」はアコギ・キーボード・歌の穏やかな展開が急転直下、熱病につかれたような狂乱へ。落ち着きを取り戻すと哀愁ギターが泣き、切ない歌声…かと思えば明るく視界が開けていくようなラスト。非常にドラマチック!「道化師」は明るい冒頭、ハードで熱っぽい展開を経て、後半は叙情的、感動的な終幕へ。