80年代後半にVOX社から出された弦楽四重奏とピアノ三重奏の録音に問題がある。弦楽器の音が遠い感じで、あたかも客席の遠い位置で音楽を聴いている印象である。弦楽四重奏に関しては、東京SQによる演奏なので楽しみにしていたのだが残念だ。
さて、このボックスは世界的には決して有名とは言えないグループによる演奏が多いが、どれも期待以上の演奏であった。調べてみるとどのグループも国内レベルでは紛れもなく一流のようだ。確かに世界で名声を得ているグループに見られるアクの強さはないが、私にとってはどれも素晴らしい演奏であった。特に、クラリネット三重奏、五重奏、ソナタ、ホルン三重奏など管楽器を含む曲は名演である。クラリネットによる一連の作品は、還暦を迎えようとしていたブラームスによる晩年の名作であるが、奇しくもクラリネット奏者のカール・ライスターは作曲時のブラームスと同じ還暦前後にこれらの曲を録音している。そのためか、彼が以前に録音したものと比べて、静謐で枯淡の境地を感じさせる演奏になっている。
追記(2023年10月)
その後、CDプレーヤーをCambridgeのものに買い換えた結果、VOX社による録音に関しても音質的に問題なく聴けた。そのため、星は5つに修正した。