バーンスタイン3度め(2度めは1970年代の映像作品)のマーラー全集は未完に終ってしもうたんですが、10番と8番は代わりに、1970年代のウィーンでの本作があてがわれました。ですから、DVDを買っても、グラモフォンの全集を買っても、分売の本盤を買っても、どれも同じ演奏です。10番も誉れ高いシノポリやテンシュテットと比較してさえ、より深い天上的で静謐な感動に包まれとると思いますけども、8番はレニーのマーラー演奏史の中でも屈指の名演。2番や5番のDVDをご覧になった方はお分かりになると思いますが、終盤ではレニー自ら涙ぐみそうになりながら指揮しはっとります。
わては最初リマスターされたCDで聴きましたので、途中コツコツいうたり、押し殺したような音が聴こえるなあと怪訝に思っていたのですが、ジャンプしたレニーが指揮台に着地したり、歌手に合図を送る際に自分もついついテンポや気合いを唸ってしまった音なんですね、レーザーディスクを観て分かりました。こうした効果音が、爆発的な高揚が時限爆弾のように連なる本盤により一層の緊張感を与えとる。3度めの全集の2番、3番、5番と同様に終盤に向けてのクレッシェンドが圧倒的で、相当ダイナミックレンジの大きい再生装置を用意せなばなりますまい。
ヘルマン・プライの独唱はただただしびれ、背筋がヒンヤリするほど感動的やし、第一ソプラノの黄色い服の方もきれいで、歌も伸びやかで好きです。第一アルトの方は、コメディアンのハリセンボンの箕輪さんに似てはるなあ、とか関係のないことを考えつつ、第一、第二アルト、第二ソプラノの独唱、清らかで再結晶されてゆくような合唱部、そして天に召されてゆく千人全員参加の爆発的コーダはただただもの凄いの一言です。もし他の演奏の方が好きという方でも、本盤がマーラーの描いたことを描き切った超名盤であることは否定でけんと思います